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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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11月2日 優しい声

籠からボールを出しては、手当たり次第に放っていた。例えば。ありがとう、と世紀。どうも、と星。どもっす、とエース。あざーす、と永遠。さんきゅう、と野良。そして。ありがとう、と、彼女。

それは丁寧に紡がれていて、優しい響きを持っていて、生苦しさが、気管の辺りにはりついた。

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11月4日 視線の裏の真意を、

二秒。
それは私にとっては無意味なほど短い。

(そんなことがあるだろうか、)


糾弾の取っ掛かりをまた作ってしまった。晒される。暴かれる。形はないが確かにあるもの、言葉にしてしまえば一瞬で輝きが失われるもの。このかんじを誰かに話せば消えてしまう。愛すべき無言語の領域が。



「例えば用事がある時、私は君がどこにいるか探すよ」
「うん」
「でも、用事は無いんだ。少なくとも、その時はないんだ。何の意味もなく君がどこにいるか探すんだよ。どういうときに、そうするのだろうか」
「意味もなく見て、何も言わずに視線を逸らすということ?」
「そう。例えば好きなのかもしれない、例えば嫌いなのかもしれない。」
「嫌いなひとの顔は見ないな――恋でもしているのかい?」
「いや全く」


(私を見たな。私を探したな。用事は一体なんなんだ。)


白と黒の重りの乗った天秤は、いつまで経っても釣り合わないままだ。

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11月2日 あなたは今楽しいですか

永遠の咄嗟の機転を果たすべく、私はエースの隣に立っていた。

エースは単なる冗談の憎まれ口を叩いていた。それはコートの笑いを誘った。
「こっちくるよ――いや、あっち!取って取って――それ、そこだ!――よし、やったあ!」
「世紀――うるさい!」
コートの笑いに包まれながら、私はただ一人、緊張していた。

エースは私に、世紀の憎まれ口を叩く。笑いながら、ひたすらに。「あいつ――うるさい!」。何度も何度も。私は何も言わずに苦笑した。サーブは入らない。ボールを誰も追いかけない。エースが本当は笑っていないことも、エースがそんなことを言う理由も、少なくとも私は分かっていた。
(分かりやすいんだ――世紀の言うように、きっと今も苛苛しているに違いない。気づいていないのだろうか、皆は)
顔をしかめないように、雰囲気を崩さないように、憎まれ口を叩きたいのは、本当は世紀に対してではないのだろう。
(やる気がない、のとは違うな。赤が言っていた、根本的ななんとやら、か。)
エースはとうとうそっぽを向いて、飛んできたサーブにも気付かない。「エース、くる」。あなたがとらなければ、きっとつづかないんです。エース。エースは二分の一より後ろに落ちそうなボールを拾った。高く高く上がったボールは鈍い音を立てて誰かの腕に当たり、そのまま体育館の床に、落ちる。



試合が終わりコートを出ようとすると、ありがとう、とエースが声をかけた。暗に言いたいことを感じとり、エースはきっと、誰かに対して怒っているのでは無いのだ、と思った。頑張って、と言うのも烏滸がましい気がして、口角をできる限り上げて二度頷くと、私は自分のチームの元に走る。永遠が同じ思いをしないように、せめて出来る限りのことをしようと、そう思った。

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11月9日 無人塔 1

いないね、とオアシスが言った。ああそうだね、と呟き、マネージャーじゃないんだから、と付け足すと、オアシスは笑った。
「別にいなくたって関係ないわ。別に寂しくなんて無いわ。休んだって。私には全然関係ないもの」
ふい、とそっぽを向いた拍子に目に入った彼女の机がからっぽであることに気づくと、ぽっかりと心に穴が空いた、とてもしまりのない気分になる。良い意味でも悪い意味でも、彼女の存在はまだ影響力を持っているのだ。

(それが良い意味ではないと思っていたのだけれど)

彼女が今日は箱の中に居ないという事実を知った時の私の第一声ときたら。「嗚呼、今日はとてもつまらない日だわ!」。望む言葉を発し、そして続ける。「今日は気が楽ね」

気づくと、でもさびしい、と呟いていて、オアシスは呆れたように言った。
「結局つんつんしきれていないのよね……でれでれじゃないの」

私は、うー、と喉を鳴らして、机にべちゃりと伏せた。

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11月6日 餌のない釣り針

怖くて怖くて仕方がない。

会話が終わり、静かに息を吐き出した自分を見て、相当神経が張っていたのだ、と思った。不信感があればあるほど饒舌になる。常に言葉を捻り出そうとしていて、意味の無い言葉を羅列する。今に関しては特に、糾弾される取っ掛かりを作らないように、煙を立たせないように、言葉を選んでいた。しかし、それでも、それすらも、「――」「――」無意味だったのなら、私は一体どうすれば良いのだろう。


「ああ、日本史が、おぼえられないなァ」
「あァ全くだ!」

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11月14日 今 1

無性に悔しくて仕方がなくて、それが怒りに変わる前に、私はなんとか涙に落とした。眠たそうな振りをして、綺麗な水で、汚れを流した。


(『悔しいね』)
(『ちがうの。仕方がないの。でも。』)


アート。真っ直ぐな人。声を上げて泣いた私の背中に触れてくれた。それだけで十分だというのに、そんな人が傍に居てくれるだけで十分だというのに。何故私は、他のものを求めていたのだろうか。

しかし今日はアートはいなかったから、一人で硬直した身体を出来る限り固めようと努力した。立ち去れない。能動的に、かつスマートに動かなくてはならない事実が、余計に私を落ち着かなくさせていた。そわそわと身体を動かして、無意味に笑顔で人に干渉すると、皆、愉快そうに笑った。「良いことでもあったの?」


(『誰かと話すために、私の話を、使ったたことが、怖いの。』)


機嫌が良い、のではなくて緊張が過ぎてそうなっていたのだが、私を含めてそれに気付いた人はいなかった。今も昔もそうだった。

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11月14日 今 2

最初の一回の切っ掛けなど、単なる気紛れに過ぎないのだろう。結果としてそうなっただけで、深い意味もなければ、追い詰められていたわけでもなかった。が。私は。なんの意味もなくそうした。彼女は笑った。どうしたの、と問い、私は答えた。なんでもないの、なんでもないの。彼女は優しく背中を撫でた。


しかし今私は知っていた。笑顔の裏の真意を。



それでも相対している間は、例の病的な被害妄想も不信感も何もなく、過去も未来もなかったので、私は負ではない別の感動に充たされ、少なくとも不幸せではなかった。


この瞬間が永遠に続けば良い、と思った。惨めな過去も、惨めになるであろう未来もない、隔絶された「今」だけが永遠に続けば。
そんな願いなど無意味だったが、私はそう願った。

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10月10日 線前雨秋


トレーナー、貸そうか。その一言が言えずに、れんしゅうしましょう、と声をかけた。

他の人間であればしたし、それをするべきであったのだが、背中を擦ることすらしなかった。単純に接触を許容出来なかった。ひどく潔癖になっていて、能動的に触ることができない。そしてなんとなく、彼女は下手に出る人間には尊大な態度をとるのかもしれないと、そう思った。その実、無意識の怯えた態度がそれを導くのだとも知っていたが、共通認識とどちらが強いのか、今は分からなかったし、考える必要も無いと思った。

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11月5日 所有物


『おそらく――人間と思っていない――所有物だと思っている。キープしておきたいんだよ。近付けばおかずにされる。離れれば干渉される――面倒だね』


いや、むしろ、何の関心もないのだ。

私はやっと、無言語の領域を共有することができ、改めて自分の心に触れた。そしてそれが予想以上に荒んでいたことに気づく。事実が事実として胸の中に現れていた。わだかまりが溢れ、頬に熱が染み、腹の中で何かが収縮していった。


『君はどうしたい? 打開か現状維持か、どちらしかあるまい』
『、わたしは――』


知っている。打開するその行動さえも、話の種にされると。もうどうすることもできない。話を聞く気が無い人間に何を言っても無駄だと――三人とも分かっているのだ。

「私は、私を変える」

それしかない。それで良い。だから、私は、いつものように黙っている。因果応報、四面楚歌、それでも、私の話を聞いてくれる人がいる限り、私はまだ眠ることが出来るのだから。

(それでも好きだと言えれば良かった)(それくらい盲目でいられたらよかった。)

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11月16日 タイガー・ホースの再会

厭な空気が充満していた。エース、船頭。強烈なデジャヴが襲い、足に力が入らなくなる。7月が背中を締め付ける。コートの真ん中で、毬は冷めていた。
(だとしたらもう、私が走る意味もあるまい)
否、でも。

私は走った。もうボールが回らないことはわかっていた。もう勝てないとわかっていた。が、走った。縦横無尽に走り回って奪ったボールを籠に捩じ込んだ。たかがこんなことに本気になるのだと、傍聴席ではきっと笑いものだ。それでもいい。それでも、もう何にも負けたくはない。チームの本気を無駄にはしない。敵の本気に応えたい。でも、もう。


がむしゃらにボールをついて、滅茶苦茶にボールを放ると、体勢が大きく崩れる。ついたマークをかわす気などない。
(――まさか)
その時初めて私は、先ほどから粘り強くついていたマークを見た。
「――もしかしなくても、」

リングの縁を一周し外に零れたボールを、ぼんやりと見ながら私はゆっくり膝をつく。その瞬間、ブザーがけたたましい音をたてる。



恣意的であるかどうかなど確かめようがなかったが、そうだとしたら心臓や星は利口だ、と思う。私は友人達の期待に沿うために、きっと膝を折っただろうし、実際、それに気付いた今、確実に集中力を殺いでしまった。

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