忍者ブログ

それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

2024.05│12345678910111213141516171819202122232425262728293031

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3月23日 幕物語/確認

最後に彼女の話をしよう。
彼女とは二度写真を撮り二度会話をした。語ることなど多くはない。只彼女と写真を撮ったとき。卒業することなど何も思わなかったのに。なぜだか無性に空っぽになってしまったというそれだけだ。それから私の腰を引き寄せたその腕から、彼女の最後の恩赦を感じた。ただそれだけだ。


「最後までいるんですか」
「うん!最後までいるよ――ええ、帰っちゃうの?」
私は黙って頷いた、それから、視界の端に捉えた同級生たちを、単なる群衆としてなぞりながら、言うべきことを言うために口を動かす、が、羽目を外した喧騒に声が溶けてしまい、聞こえない、というように彼女は顔をよせた。彼女の耳に手をそえ、むかって、内緒話のように私は言う、「知っていたと思うけれど」

知っていたと思うけれど、わたしはむかし―――――、―――――――!


彼女は目を猫のように細めて、口角を猫のように上げて、言った。「ありがとう!」。いつも通りの口調だったが、私はそれを、わざとらしいとは思わなかった。彼女が私を許したのか、私が彼女を許したのか、わからなかった。が。ごめんなさい、ごめんなさい。私はそう謝り、彼女の肩にすがっていた。


一年ぶりのそれは、記憶以上にやわらかく、思い出以上につめたかった。



彼女は喧騒に向かって行こうとし、私は最後の問いを尋ねる。

「私は、君に告白したことになるのかな」

彼女はそれには答えなかった。

私はそれで箱を後にし、一度も振り返らなかった。それっきり彼女とは話をしていない。そして、それでよかったのだと思っている。

彼女の話は、それで終わりだ。

拍手

PR
*COMMENT-コメント-
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析