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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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4月28日 それが断絶の上の構築だとしても

気づかないふりをして、私はまた甘えるのだ。



すじのある短い髪を撫でながら私は思う。 真綿で首を締めている、と。

黙っていれば必然的にに沈黙は訪れる。これを気まずく思わないのは、もしかしたら(考えるまでもなく)私だけなのかもしれない。
「親しい間柄とは、沈黙を苦にしない関係だ」。
だとしたら距離を詰めたと思っているのは私だけで、この関係は酷くアンバランスに違いない。
不審に思わないのは慣れで、何も言わないのは許容だと信じたかった。

髪を撫でる。なでるというよりもたたく。肩に当てた指先を首から頬に滑らせたが、特に何の反応も返されなかった。
「今日は冷たくないはずだ」
嘯いた私の言葉になにか言葉を紡いだ気配がしたが、問いただすことはしなかった。 その程度のことなのだ。

また沈黙が訪れる。
頬から手をはなし、頭を撫でる。

ふとまわりを見渡すと、やはり何も変わらない。
この行為がどんな意味を持つのか、私は知っている。知っているが、なにもできない。
相変わらず、彼女は何も言わない。
ただ、全てがどうでもよかった。

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4月27日午後

「いま、いーい?」

「……いいけど」

露骨に困った声が出てしまったかと一瞬危惧したが、長身のクラスメートは全く気にする素振りも見せずに、「にゃ―」とか「わ―」とか、よく分からない擬音を発しながら首に手をまわしてきた。

「うー、かわいいなあ……かわいいなあ」
「ありがとう」

あの約束を取り付けてから三日経った。彼女は飽きもせずに毎日私の元にやってくる。
その事実は特に驚くべきことではなかった(むしろ想定の範囲内だった)が、些か予想よりも密である。

肩口に顔を埋め、腕を背中に回して、じっとしている。それだけで幸せだと、全身が言っている。

「う―」

ふわふわとした雰囲気と人の良さそうな笑みとは裏腹に、彼女の(恐らく私に対する)言葉には有無を言わさぬ強さがあった。


おそらく彼女は、私に拒絶されるとは毛頭思っていないのだ。



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4月28日11時23分

あれ。
彼女は真面目で潔癖で不干渉で無口で寡黙で口下手で。



目があった。「何をしているの?」


彼女は暫く夢見心地で考える素振りを見せた後、困ったように呟いた。
「接触してるの」


くしゃ、とかきまわした髪が乱れた。

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4月28日15時

「何がそんなに楽しいのかなあって思って」

字面通りに受けとるなら中々強い言葉であるし、拒絶と取れなくもない。
しかし麻痺した頭はそんな毒すら薬に変えてしまった。しあわせ。たったそれだけのことで。

「うー」

言語化できないのを誤魔化すように髪を撫でる。顔を見なかったから、何を考えているのかなんて分からない。そして、わかる必要もない。
必要なのは自身の満足だけで、それ以外は二の次で。
いつも私は繰り返している。

「ん」

何をしたかったのかも忘れてしまった。何が欲しかったのかも忘れてしまった。ただ、その事実だけが愛しかった。


「『精神的に向上心の無いものは馬鹿だ』」。どこかで先生が罵っている。
しかしそれにすら耳を閉じ、私は髪を撫で続けた。

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4月28日15時

「貢いだの?」
机に無造作に置かれていた菓子箱を摘みながら友人が言った。

何故皆そういう表現をするのだろう。あの旧友も目の前の彼女も。
何か上手い言い訳をしたかったが出来なかったので、「ああ貢いだよ!」。冗談めかしたつもりだったが、語気が強くなってしまったようだった。(その証拠に誰も何も言わなかった)。
いつだって雀に悪気は無いのだ。


「みつぐ、ってどんな意味なんだろう」
「しらね」

ただ漠然と、感情的な人間は嫌いだ、と思った。

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4月30日14時57分

黙って掲示板を眺めるクラスメートに菓子箱を差し出すと、「ありがとうございまーす!」と、わざとらしい感謝の言葉が返ってきた。わざとらしい、といえば嫌に感じるけれど、彼女はいつもそうなのであまり気にしなかった。『演技臭いことなどいつものことだ』。
あの旧友に言わせれば彼女は「偽者」であるし、同部活の人間に言わせれば「偽善者」だそうだ。がしかし、私はそうは思わない。ただの善を偽ってすらいない只の悪人のような、つまりこれが彼女の素だということだ。
(だとしたら、わざとらしい、という表現は聊か見当違いである気もするが、それ以外にしっくりくる表現を私は思いつけなかった)

クラスメートは、その場で菓子を口に放り込んで咀嚼した。沈黙が訪れた。
そもそも私が黙って差し出したのは、口の中に同じ菓子が入っているからで、だから勿論私も声を出せない。
空になった菓子箱を右手の先で摘んで、左手で彼女の頭を撫でた。特にいつもと変わらない。
つまらなかったので頬に手をあてると、むぐむぐと菓子が砕かれている感触がした。彼女は何も言わなかった。

広げられたノートは、只単純に勉強したかったのか、それとも無意味な沈黙からの脱却か、判別がつかなかったがどちらでも大差はない。
ふ、と視界の端を掠めた気がして顔を上げると、旧友がこちらを見て笑っていた。傍には何の因果か「本物」の二人が座っていて、怪しまれたら敵わない、と曖昧に笑って目を背けた。

今日は動いたから抱きつかせて貰えない。駄駄をこねても、「ね、」とあやされてしまう。
髪を梳こうと思ったが、短すぎて出来なかった。
肩を叩いてその場を去ると、友人が私をみて微笑んだ。その真意を深読みして、私はまた曖昧に笑った。
旧友が指で作ったハートが瞼の裏をちらついた。

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5月2日15時2分①

「あ、イケメンだ」
「イケメンだよね―」
「私を見て怯えた顔しないでよー」

何故か次々に言葉が投げ掛けられて、私は閉口した。もし人生に「もてじかん」があるなら、それは間違いなく今だ。いつもなら気の利いた会話の一つや二つをしようと努力するけれど(しかしあくまで「努力」だ。成功しているか分からないし、遊ばれているだけかも知れない。とにかく、私は会話が下手だ)、今はそんなことをする余裕はない。

いつだっていっぱいいっぱいで、様々な状況を想定してからでないと動けない臆病者だ。逆に、そのプロセスさえ経てしまえば、簡単に飛び越えられてしまうということでもあるけれど。
アドリブが苦手だから、曖昧な笑みをのせてがくがくと頷くことしか出来ない。
はやく、はやく。私の背後に座っているあの子のところに。
「じゃ、そういうことで!」


私は腕を伸ばして肩を叩いた。「これあげる」。金色の包み紙を机に置く。首に抱きついて、頬を寄せる。かわいいな、と口の端で笑う。
ほら、簡単に飛び越えられた。

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5月2日11時45分

ああ、宙ぶらりんだ。
一番廊下に近い列の、前から二番目に座っている彼女をみて私は思った。

彼女の次の行動を予想してみる。一、いつも昼を共にしている二人に声をかける。二、同部活の友人達(素晴らしいことに、普段喋っているところを見たことがない!)に声をかける。三、一昨年仲が良くて、今年再会したあの友人に声をかける。
勿論その選択肢の中に旧友と私はいない。それぞれ理由は違うけれど。
彼女の動向を観察するのは、親が子を見守るのにも、狼が羊を狙うのにも似ていた。

予想は一。大穴は二。観察に忙しくて、自分が所属する集団の話を私は全く聞いていない。それができるのは彼女達との間にそれなりの信頼関係を築けている(と、信じている)からで、私は彼女達に感謝をしている。

「いれてもらえますか?」「あれ、」
「あっちはあっちでできているから、」

後ろで交わされる会話を、私ははっきり聞いた。皮肉にも真後ろだった。三。予想通り。特に驚くような結果ではなかった。
戸惑ったような空気も、こちらにくる直前の視線も、皆一様に淡々と私の肌を刺す。「でも、まあ、彼女は皆と仲が良いタイプの人間だから、」いつか旧友が言った言葉と、彼女自身が言った言葉とが木霊する。

かつての私がそうだったように、本人が良ければそれで良いのかもしれない。むしろ、そうであるべきだ。しかし、それでも漠然とした引っ掛かりがあるのは、おそらく私の性格と彼女へのわけのわからない感情が原因に違いない。

「そう。さみしくないの、ってよく聞かれるけど。全然へいきなんだ、ひとりでも」

様々な人間関係の構築方法がある。ジョーカーや雀や円周率や、そして彼女のような。どれも間違ってなどいないはずだ。誰にもそれらを否定する権利などない。 あってはならない。

ふと、去年のことを思い出した。可愛い二人組みと、それから彼女と。三人。
ああそうだ、私はただ、ひとりでいる彼女を見たく無かっただけのだ。髪を撫でるのも、なにかと気にしたのも。
でも私はこの集団に属している限り、永遠に彼女を、そう、恩着せがましく言うなら、助けることなどできないのだ。私が一人になるか、彼女に惨めな思いをさせるかの二択しかない。
しかし一方で、私などに助けられる彼女は見たくないかもしれない、などと思っているのだから始末におえない。私が気にするのはやはり世間体なのだ。

彼女に対するわけのわからない感情と、「傍ら痛し」。どちらが先にあったか私は知っている。知っているからこそ、身動きが取れなくなったのだと、その場では気付かないふりをしていた。

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5月2日午後

「わすれものをしたんだ」
そう言って下駄箱を飛び出した。わすれもの。階段を一段飛ばしで駆け上がる。はやく。はやく。一周と半分繰り返したところで、帰宅集団にぶつかった。皆談笑している。あ。私はにんまりと笑って最後の二段を蹴飛ばす。呆けた顔を視界の端に引っ掛けて、二周目。「びっくりした」。手すりを挟んで声が聞こえる。またにんまり。「ばいばい!」。階段を蹴るのを止めて、「ばいばい」。集団の一人が私の顔を驚いたように見た。気付かないふり。そのまま階段を駆ける。今度は二段飛ばしだ。忘れ物は見付かった。

髪を撫でた感覚は、まだ少し残っている。それはかつて、純粋に楽しかったあの頃の感情にも似ている。しかし今のそれは、多大なるリスクの下に得られているのだと、その時の私はまだ気づかなかった。

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5月5日1 時59分

思い出したくもない記憶が時折どっと押し寄せて来るときがある。
それをさらりと受け流せばいいものを、また再び吟味し直してしまうのだから、被虐趣味でもあったのかと自分を疑いたくなる。そうすることでより鮮明に記憶に焼き付けてしまうのに。
ごろりと寝返りをうつと、一時間くらい前に聞いていたヘッドフォンのコードが首に絡まった。

音楽も字も彼女の記憶も、何も私の気をまぎらわせてはくれない。そう、彼女の記憶さえも。自分を自嘲するように笑おうとしたが、うまくできなかった。そして、じちょう、という言葉がさらに私を苛立たせる。
乱暴にコードを引っ張ると、がつん、と大きな音が闇に響いた。ヘッドフォンとレコーダーがぶつかったらしい。


苛々して他にあたる。悪いのは自分だと頭の中では分かっているのに。いつからこんな性格になってしまったのだろうか、と原因を探ろうとするのは、やはり他に責任を見いだしたいからに決まっていた。

昔に戻りたい、と思うのは過去の美化だろうか。それとも、ただのナルシストなのだろうか。
現状に満足せずに、水面に映った幻想を眺め続ける。そういった点ではどちらも同じように思えた。結局「今」の無い物ねだりなのだ。


「****に会いたいなあ」
ぽつり、と放った言葉は呆気なく闇にとけていった。



束の間の休息は呆気無く終わるだろう。そしてまたふわふわした毎日が始まる。

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