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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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嘘吐きと偽善者の茶番劇 0

髪が床に散った。

「てめぇに、何が、わかるって、ん、だ!」
興奮状態が過ぎて、息も絶え絶えで、私は震える左手で首を絞めていた。う、と微かに声を漏らしただけで、叫び声を上げようともしなかったその口に無理矢理右手を突っ込んで、舌を乱暴に掴む。くそう、くそう。涙が壊れた蛇口みたいに溢れてきて、それは重力に従って頬に落ちた。微かに開かれた目には酷い顔の誰かが映っている。誰かが呻いている。誰かが誰かの首を絞めている。否、それは私だ。それでも抵抗をしない身体に、体重をかけた。苦しそうに歪めた口が何かを訴えるように微かに動いて、私は急に冷静になって身体を弛緩させていた。教室、床、机、椅子。存在を失っていた物たちが、炙り絵のようにじわじわと主張をし始めている。私の体の下で、微かに息をする音が聞こえる。
「…………る」
私の声に反応して、瞑られていた目が私の方に向けられた。
「ころせるんだよ、簡単に」
「……」
「軽々しく、しぬ、なんて、言ってんじゃねえよ」
思いの外低い声が出て、自分でもぞっとした。
「ころせないくせに」
掠れた声が私の耳に突き刺さる。
「ころすきなんて、ないでしょ」
私は大きく見開かれた目を見た。
「34。片手じゃ人はころせないって知っているくせに」
その瞬間、今度こそ、私の中でたがが外れた。本当に壊れたときは、案外冷静になるらしい。
「望み通り、※※※※※※※※」
そして慈しむように頬に手を添え、大きく開けた口が、歯が、首に触る――


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嘘吐きと偽善者の茶番劇 1

「また事件だあ?」
すっとんきょうな声を出した野次馬に向かって、正義漢は、しいっ、と人差し指を口にあてた。
「大きな声を出すな。内密な話なんだから」
教室は休み時間の喧騒で、級友たちはあたり構わずわあわあと喚き散らしている。この状況ならひそひそと話す方が怪しまれる気もするが、と野次馬は思ったが、ここは話題を持ち合わせている正義漢の意見を尊重することにした。
「別にびくつくことはないよ。盗難なんて珍しいことじゃないだろう?明るみになっていないだけで」
出来るだけ声を小さくして言う。
「そう、珍しいことじゃない。だから今までのことも一々取り沙汰されなかったんだ。でも今回は違うらしいぜ。みてな。間もなく教師が集合をかけるから」
正義漢の言葉通り、教師達がぞろぞろ現れて全員校庭に集まるように、と指示を出した。教室の喧騒が異常事態を察知して静まりかえった後、爆発した。
正義漢は眉を少しひそめた後、「来い」と野次馬の腕を取って走り出した。校庭ではなく、屋上に向かって。
「どこに行くんだよ!」
「君に意見を貰いたいんだ」

二人の背中は喧騒から遠ざかっていく。そして、終わりの始まりが始まろうとしてる。

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嘘吐きと偽善者の茶番劇 2

校庭に集まったからといって点呼はしないだろうし、酷く混乱する筈だ、と言う意見は一致した。
「何か言われても、『気分が悪かったので保健室に行ってました』ですむことだよ」
野次馬は楽観的に言った。
「で、何があったんだよ?その口ぶりだと何かを知っていそうだけれど」
「まあね」
正義漢は頬に笑みをたたえながら、フェンスに預けていた背中を起こした。五階分下の喧騒が此処まで聞こえてくる。
「この一週間、二人で聞き込みだの張り込みだの、情報収集をしていただろう?それらを総合して論理的に組み立てて、あれこれ予想を立ててきたけれど」



一週間前に起きた盗難騒ぎ。犯人を探すと誓った人間と、好奇心からそれに便乗した人間がいた。二人はお互いにお互いを揶揄して、戯れのあだ名をつけた。



「その結果が出たってことさ」
正義漢はタンクの後ろを指差した。
 

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