忍者ブログ

それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

2024.11│123456789101112131415161718192021222324252627282930

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3月23日 幕物語/友

毬の話をしよう。


ずいぶんと珍しい同級生達と最後まで箱に残っていた毬を連れて、私は例の場所にやって来た。
「ここに、いたんだ。むかし。」
「……うん」
階段の縁に座ると、何度もこうして話をしたことを思い出す。それも最早、過去になろうとしていた。
「有名になるんだ、」
「うん」
「何でも良いから、有名になるんだ」
「うん。やるってみる。そうすれば、」
また、毬に会えるんだろう。


「さびしいなぁ。毬に会えなくなるのは」
「なんで!」
「他の人はまた会えそうだけど、毬にはもう会えなさそうなんだもの」
聡明な二号は大きな声で言った。冗談のように言ったが、それがこの瞬間を的確に表していた。皆が皆、もう毬に会えないことを、直感的に感じていたのかもしれない。冷たい風が吹いていた。
「もう、行った方が良い。寒いし、約束があるんだから」
私たちは不承不承に背中を向けて、別れを告げる。
「さよなら」
歩き出し、しばらくしてからそっと振り替えると、いつも誰よりも早く背を向ける、あの毬は、私たちの背中をじっと見送っていた。見えなくなるまでそうしているような気がして、私はそれを指摘せずに前をむいた。視界が曇っていた。


『ずっと、探していたよ。毬のような人を。中中いなかった』
『そうだ、君のような人の方が、ここでは珍しい。』
『もっとはやく話したかった。そうすれば私は、』
『ほらまた、さみしいことを言う!』


その夜、毬からメールが来た。

紛れもない三人目である毬との話は、これで終わりだ。

拍手

PR
*COMMENT-コメント-
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析