忍者ブログ

それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

2024.05│12345678910111213141516171819202122232425262728293031

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3月19日 脱力

「すみません海先生。持っていきますから……」
「いや! 別に良いよ、」
意外そうに答えた海先生に、雀と顔を見合わせる。
この箱の規律と暗黙の了解にも慣れたが、未だに首を傾げることがあった。そのうちの一つが掃除をしないことで、
「海が疲れてるよ、」
もう一つが教師に敬語を使わないことだ。
「最後の大掃除だ。卒業すればもうこんなふうに掃除をすることもあるまい。」
「そうだね」
「まあ、それも乙ということだよ」
と、会話をしてそれっきり黙った。
机の足を淡々と拭くもの、友人との談笑に花を咲かせるもの。様々な人間がいる。早く終わりたいのなら口ではなく手を動かせ。と、ワタヌキなら露骨に顔をしかめたかもしれない。しかしワタヌキも、いい加減その暗黙のルールに慣れたのか――私はワタヌキが、内向的になったせいだと思っているけれど――そういうものだと諦めたのか、黙って手を動かしていた。

「それは使わないものですか」
「そう。まとめて持っていくよ」
「ああ――いや、持っていってしまいましょう」
ホウキを受け取って教室を出た。立ち止まるのを、何もしないのを、避けたかった。ぼんやりと終わるのを待つようなことは、したくない。実際的なことしか今の私には意味を持たないのに。
教室からは、ああ、優しいのね、と、彼女の声が聞こえてきたが、違うんだ、と思う気力も、その意味を考える体力も、生まれてこなかった。

拍手

PR
*COMMENT-コメント-
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析