どこか全てに距離を取り浮遊していた。そして、久しぶりに彼女を見たときは、心臓を揺さぶられたような気がした。たまに、ごくたまに、寝入り端に心臓を転がされるように感じるときがある。それに似た生理的な感触。喉の奥には人工樹脂の塊がずんぐりつまっていて、飲み込むことを困難にする。
ただそれだけだ。
何も思わない、と、思う間もない。
黙り込んだ海のような「私」はただぼんやりと箱の中身を見ていた。
「私の、 !」
「ああ、そうだね」
に、と笑うと東北は笑った。心臓もとても愉快そうに笑った。私は私が二重になっているような気がして、痛みを感じない。
その代わりに、今までのように力がない――ただ切れた凧のように、どこか遠く遠くを浮遊してゆく。離れていく。
昨日昨日だと思っていた日が一年前だったのは半年前の話。いつかいつかだと思っていた日がもうすぐなのは今の話。
とうとう私は断ち切って、今ではなく先を見るのだ。
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