気づかないふりをして、私はまた甘えるのだ。
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すじのある短い髪を撫でながら私は思う。 真綿で首を締めている、と。
黙っていれば必然的にに沈黙は訪れる。これを気まずく思わないのは、もしかしたら(考えるまでもなく)私だけなのかもしれない。
「親しい間柄とは、沈黙を苦にしない関係だ」。
だとしたら距離を詰めたと思っているのは私だけで、この関係は酷くアンバランスに違いない。
不審に思わないのは慣れで、何も言わないのは許容だと信じたかった。
髪を撫でる。なでるというよりもたたく。肩に当てた指先を首から頬に滑らせたが、特に何の反応も返されなかった。
「今日は冷たくないはずだ」
嘯いた私の言葉になにか言葉を紡いだ気配がしたが、問いただすことはしなかった。 その程度のことなのだ。
また沈黙が訪れる。
頬から手をはなし、頭を撫でる。
ふとまわりを見渡すと、やはり何も変わらない。
この行為がどんな意味を持つのか、私は知っている。知っているが、なにもできない。
相変わらず、彼女は何も言わない。
ただ、全てがどうでもよかった。
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