「いま、いーい?」
「……いいけど」
露骨に困った声が出てしまったかと一瞬危惧したが、長身のクラスメートは全く気にする素振りも見せずに、「にゃ―」とか「わ―」とか、よく分からない擬音を発しながら首に手をまわしてきた。
「うー、かわいいなあ……かわいいなあ」
「ありがとう」
あの約束を取り付けてから三日経った。彼女は飽きもせずに毎日私の元にやってくる。
その事実は特に驚くべきことではなかった(むしろ想定の範囲内だった)が、些か予想よりも密である。
肩口に顔を埋め、腕を背中に回して、じっとしている。それだけで幸せだと、全身が言っている。
「う―」
ふわふわとした雰囲気と人の良さそうな笑みとは裏腹に、彼女の(恐らく私に対する)言葉には有無を言わさぬ強さがあった。
おそらく彼女は、私に拒絶されるとは毛頭思っていないのだ。
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