「何がそんなに楽しいのかなあって思って」
字面通りに受けとるなら中々強い言葉であるし、拒絶と取れなくもない。
しかし麻痺した頭はそんな毒すら薬に変えてしまった。しあわせ。たったそれだけのことで。
「うー」
言語化できないのを誤魔化すように髪を撫でる。顔を見なかったから、何を考えているのかなんて分からない。そして、わかる必要もない。
必要なのは自身の満足だけで、それ以外は二の次で。
いつも私は繰り返している。
「ん」
何をしたかったのかも忘れてしまった。何が欲しかったのかも忘れてしまった。ただ、その事実だけが愛しかった。
「『精神的に向上心の無いものは馬鹿だ』」。どこかで先生が罵っている。
しかしそれにすら耳を閉じ、私は髪を撫で続けた。
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