「あ、イケメンだ」
「イケメンだよね―」
「私を見て怯えた顔しないでよー」
何故か次々に言葉が投げ掛けられて、私は閉口した。もし人生に「もてじかん」があるなら、それは間違いなく今だ。いつもなら気の利いた会話の一つや二つをしようと努力するけれど(しかしあくまで「努力」だ。成功しているか分からないし、遊ばれているだけかも知れない。とにかく、私は会話が下手だ)、今はそんなことをする余裕はない。
いつだっていっぱいいっぱいで、様々な状況を想定してからでないと動けない臆病者だ。逆に、そのプロセスさえ経てしまえば、簡単に飛び越えられてしまうということでもあるけれど。
アドリブが苦手だから、曖昧な笑みをのせてがくがくと頷くことしか出来ない。
はやく、はやく。私の背後に座っているあの子のところに。
「じゃ、そういうことで!」
私は腕を伸ばして肩を叩いた。「これあげる」。金色の包み紙を机に置く。首に抱きついて、頬を寄せる。かわいいな、と口の端で笑う。
ほら、簡単に飛び越えられた。
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