「…………その人は、所有物、って表現したよ――」
アートは私を一層強く抱きしめた。強張った身体を抱えきれずに、反れた力をいなすように、腕が震えたのが伝わった。
「……物凄く、的を射てる、と、思った」
アートはやはり黙って何かに耐えていた。
「でも、でも、私は所有物じゃない。所有者は、所有物に対して責任があるけれど、彼女は、私に対して、責任はないもの……」
『わたしはね、人間様に飼われたいんだ』
『……どういうことなの、奈良。』
『首に鎖をかけられて、餌を与えられて、一生ご主人様に飼われて暮らすんだ……』
『……ああ、成る程。――それはとても、』
シアワセなことかもしれないな――
「……いっそのこと、所有して、くれれば、よかったのにね――」
「ああ、しょゆう、されたい、ね……」
淡々とした言葉に暫く沈黙をした後、アートは噛み締めるように言った。
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