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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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8月26日 8月のバレンタイン・デイ②

私は自分を奮い立たせる思い出を持っていないし、また、持つ必要などないと考えている。しかし持っていたことはあった。そしてその偉大さを知っていた。
だから、過去に思い出を持っていない時よりも幸せだと思った。自分の矮小さを知っているぶん、幸せだと思った。
思い出のぶれと同時にぶれて、何かに掴まっていなくては四肢を地面に貼り付けてしまうような、そんな自分がいることを、今の私は知っていた。


それから私は、何かがあるたびに想像することにしている。好きだった級友に手を握られ圧倒されるシミ先生と、柔らかい軍手の感触。それから、チョコレートの包みをあける音。5円を模したそれを、口に入れる様子――。





シミ先生は爪の先まで気を遣っている子が好きだ。
スカートの丈さえ少数派を保つ私は、シミ先生の目にどのように映っているのだろう。

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9月5日 青い鳥①

私はね、今までに三度決定的な失敗した。一度目は中一の時。リレーでね、バトンを落とした。バトンゾーンで、次の走者にうまく受け渡らなかったんだ。二度目は中三の時。やっぱりバトンゾーンでうまく渡らなかった。落としはしなかったけれど、その時まで一位で来たのが、二位になってしまってね。しかも悪いことに次の人はアンカーだった。結局抜かすことは出来なかったよ。三度目は高二の時。障害物競争だった。一つ上の学年と競っていた。必死で網をくぐって、なんとか差を四十センチまで縮めたんだけど、焦って跳び箱から転倒さ。情けなくって仕方がなかったよ。



無様な姿を晒した高二、それでも彼女は言ったんだ。「かっこよかったよお疲れ様!」。いや、言ったんじゃないな。私が疲れて家で夕食を食べているとき、携帯のランプが赤く光ったんだ。つまり、彼女からメールがきたんだよ。その時私は嬉しくて嬉しくて、冗談ではなく歓喜の声をあげながら廊下をスキップしたよ。――ああ、笑わないで。本当のことなんだ。


でもね、よく考えて御覧よ。その時は――その時も――私と彼女はそんな――労いの言葉をかけあうような――そんな関係じゃあなかった。話すことなど殆ど無かったんだ。おかしいだろ?それなのに彼女は私にメールをした。尤も、その時の私はそんなこと気にもかけていなかったけれど。


彼女はね、知っていたんだ。私は露骨だったし、まわりもからかっていた。あの時のような面白がりではなく、なんの善意も悪意もなくね。(いや勘違いかもしれない。でも少なくとも私はそう信じている)誰も、何も、言わなかった。それで、彼女は彼女の考えるようにメールした。ああそうだ、きっとそれが何にも影響をされず、何にも染まらない、彼女の唯一の行動だったんだって、今は思うよ。

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9月5日 青い鳥②



私は彼女に何も与えなかった。彼女も私になにも与えなかった。彼女は私が望んむものを全部くれた。
青、チョコレート、返事、メール……全部私が望んだことで、あるいはそれらが与えられるのは必然だったんだ。ただ彼女は、それ以上のは何も、びた一文だってくれなかった。そう、ずっとそう思っていたんだ。

でもあったんだ、一つだけ。あの日、全てが始まってからたった一つ、彼女が、彼女の意思で、私に与えたものが。




本当はね、それを、全てを知っている大人が、何も知らない子供に嘘を吐くような(それでいてそれが優しさだと信じているような)残酷な好意だってまとめようと思っていたんだよ。(若干の例えを交えてね)でもねえ、やっぱり無理だった。それは悪意ではないんだから。悲しすぎるほど優しい他人行儀。それを否定するのはあまりに苦しい。その時その瞬間の私は、間違いなくそれで救われていたんだ。無様な姿を晒したことも忘れられるくらいにね。


彼女には沢山のものを貰ったよ。心からそう思う。私は何もあげなかったっていうのに。分かっていて独善的な愛を注いだ。分かっていて逸れた道を貫こうとした。分かっていた。本当は、私は彼女のことが好きなんじゃないって。いつまでもうやむやにだらだらと続けてきたのは、きっと怖かったからなんだ。この気持ちが無くなったとき、私が今までやってきたことが白紙に還るのが――怖かったんだ。
異常なまでの執着は、ただ臆病な自尊心と、空っぽの中身を隠すためだけのもので、それ以外の理由なんてありはしなかったんだよ。空っぽの私は、自信を持って言えることが一つしかなかった――『私は彼女が好きです』。


ああ、休み明けに彼女の顔を見て、何も思わなかったときの焦燥感は、きっとこれだったんだ。

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9月5日 青い鳥③


彼女にはとても感謝しているよ。ほんとうに、筆舌に尽くしがたいくらいにね。





ねえ――どうしてそんな顔をするの?君は私じゃないし、彼女はあの子じゃないのに。君とあの子は、きっと別の結末だよ。
――だから、悲しそうな顔をしないで、ワタヌキ。面白い話を読んだんだ。青い鳥はね、『ある時から、元から青かったことになったんだ』。

ねえ、幸せになって、ワタヌキ。

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9月12日 夏の終わり

君は今幸せなの?――ちょっと、幸せじゃないかもしれない。辛さは苦笑していった。


予想外の結末ではなかった。だから私は、全くもって衝撃などうけなかった。


辛さにしても奈良にしても、幸せそうだったのは最初だけだったし、奈良に関しては悲しそうな顔が印象に強い。

始まるときはあまりにもなあなあで、いい顔をしなかった。しあわせだという言葉と、その絆を信じて何も言わなかったのだ。今更その時の云々を持ち出す気はないが、果たしてこの束縛に意味はあったのかと、私は夕焼けを見ながら思う。

どれもこれも今更過ぎた。
あの時もっとはっきり言っていれば、二人は傷付かなかったかもしれない、という後悔も仮定も、私の自己満足に過ぎない。総てが手遅れで、もしかしたら最初から歯車は噛み合っていなかった。無理矢理噛み合わせようとすれば必ず歯は折れる。折れる前に回転を止められてむしろ良かったのだと、肯定的にとらえるべきだ。



『いやだ』
と、奈良はどんな気持ちで辛さを引き留めたのだろう。
辛さよりもむしろ奈良を心配していた。奈良。変わった人。それを誰かに相談出来るのだろうか。辛さがかつて心配したように。




「私は間違っているのかな」
「間違っちゃいないよ」
本当にそうか私には分からなかったが、間髪入れずにそう答えた。辛さは悲しそうに笑った。

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