私はね、今までに三度決定的な失敗した。一度目は中一の時。リレーでね、バトンを落とした。バトンゾーンで、次の走者にうまく受け渡らなかったんだ。二度目は中三の時。やっぱりバトンゾーンでうまく渡らなかった。落としはしなかったけれど、その時まで一位で来たのが、二位になってしまってね。しかも悪いことに次の人はアンカーだった。結局抜かすことは出来なかったよ。三度目は高二の時。障害物競争だった。一つ上の学年と競っていた。必死で網をくぐって、なんとか差を四十センチまで縮めたんだけど、焦って跳び箱から転倒さ。情けなくって仕方がなかったよ。
無様な姿を晒した高二、それでも彼女は言ったんだ。「かっこよかったよお疲れ様!」。いや、言ったんじゃないな。私が疲れて家で夕食を食べているとき、携帯のランプが赤く光ったんだ。つまり、彼女からメールがきたんだよ。その時私は嬉しくて嬉しくて、冗談ではなく歓喜の声をあげながら廊下をスキップしたよ。――ああ、笑わないで。本当のことなんだ。
でもね、よく考えて御覧よ。その時は――その時も――私と彼女はそんな――労いの言葉をかけあうような――そんな関係じゃあなかった。話すことなど殆ど無かったんだ。おかしいだろ?それなのに彼女は私にメールをした。尤も、その時の私はそんなこと気にもかけていなかったけれど。
彼女はね、知っていたんだ。私は露骨だったし、まわりもからかっていた。あの時のような面白がりではなく、なんの善意も悪意もなくね。(いや勘違いかもしれない。でも少なくとも私はそう信じている)誰も、何も、言わなかった。それで、彼女は彼女の考えるようにメールした。ああそうだ、きっとそれが何にも影響をされず、何にも染まらない、彼女の唯一の行動だったんだって、今は思うよ。
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