君は今幸せなの?――ちょっと、幸せじゃないかもしれない。辛さは苦笑していった。
予想外の結末ではなかった。だから私は、全くもって衝撃などうけなかった。
辛さにしても奈良にしても、幸せそうだったのは最初だけだったし、奈良に関しては悲しそうな顔が印象に強い。
始まるときはあまりにもなあなあで、いい顔をしなかった。しあわせだという言葉と、その絆を信じて何も言わなかったのだ。今更その時の云々を持ち出す気はないが、果たしてこの束縛に意味はあったのかと、私は夕焼けを見ながら思う。
どれもこれも今更過ぎた。
あの時もっとはっきり言っていれば、二人は傷付かなかったかもしれない、という後悔も仮定も、私の自己満足に過ぎない。総てが手遅れで、もしかしたら最初から歯車は噛み合っていなかった。無理矢理噛み合わせようとすれば必ず歯は折れる。折れる前に回転を止められてむしろ良かったのだと、肯定的にとらえるべきだ。
『いやだ』
と、奈良はどんな気持ちで辛さを引き留めたのだろう。
辛さよりもむしろ奈良を心配していた。奈良。変わった人。それを誰かに相談出来るのだろうか。辛さがかつて心配したように。
「私は間違っているのかな」
「間違っちゃいないよ」
本当にそうか私には分からなかったが、間髪入れずにそう答えた。辛さは悲しそうに笑った。
PR