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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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12月30日 3月3日


その時盲目だった私でさえ、その言葉は薄いと思った。勿論直ぐにその考えは押し出され、なかったことになった。確かにその言葉は私を救ったのだ。と。私は思った。

思わざるをえなかった。
それは自己暗示だった。私は彼女の言葉で、救われなければならなかったのだ。

それは最後の手段だった。
それで変化がなければ後がなかった。もう、変わりようが無かったのだ。


勿論救われてなどいなかった。前進も退歩もなかった。拒絶も許容もなかった。
そしてやり場の無い感情を消化する矛先は、自分に向いた。

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10月23日 逃げる糸みみず 2



当然だが、事実は別の形を持って、私の前に提示された。


不思議なことにそれは――心臓の言葉は――予想外のことだった。それ故に、動揺はしなかった。本当に面食らった時は、動揺した、と思う間も無いのだ、と、今はぼんやりと思う。


事実は、語る人間によって形が変わる。
それは事の本質的な変化を指すものではなく、何かを語る際に必ず含まれる、善意や悪意といったスパイス、それは主観とも言い換えられるけれど、それが語る過程で、事実それ自体の見た目を変えてしまうというただそれだけのことで、故に形が変わったからといって、それが必ずしも虚実であるわけではない。
そしてそれは、無限の可能性を秘めている。


その後はというと私は、不用意な行動をとった過去を半ば客観的に見ながら、致し方あるまい、と、奥歯で噛み砕いていた。
「此方にその意図が無くたって、彼方がそう受け取ったのなら。それは紛れもなく事実なのだ。彼女は嘘をついてはいないし、その点に於いては、悪意があったわけでもあるまい。」
事実、それ以外に関しては紛れもないことだったし、彼女に責めるべき点は見当たらなかった。私がいけないな。そう言うと、オアシスは面食らった顔をした。ジョーカーは、自己犠牲的だ、と指摘した。
(うん?)
この部分の事実だけ取り出せば、被告と原告は逆転してしまうらしい。それは彼女にとっても私にとっても心外なことだったから、兎に角黙ろうと思った。過去を蒸し返すつもりはなかった。それが筋というものだし、実際暫くの間はそうしていた。
「彼女の言葉は真実だ」
そう呟いた。のだが。


「君の好意を彼女は知っている。けれど、君はそれに――彼女が好意に気付いたことに、気付いていないのではないかって、」
彼女が。


(だとしたら、私は果たして、彼女に告白をしたのだろうか)


その引っ掛かり全てを言葉にしてしまうのは躊躇われ、しかしそれでも口にせずにはいられない。「そう言ったということは、本当は分かっているんじゃないのか――」
私に、告白の意図がなかったということに。




『そう、彼女は言っていたよ。  に告白されたって』

あれから三月以上も経っていた。丁度、彼女が私の「告白」から置いたのと、同じ期間だった。

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1月29日 導火線



「――言っちゃいなよ」

彼女はまるではにかむかのように笑った。
その声は不自然なほど自然で、この状況で不安も怯えもなく、むしろ何かしらの愉悦と確信と期待を含んでいた。だから、彼女は。

彼女は。
告白されるのを待っている。
ただその言葉を聞くためだけにここにいるのだと、私はぼんやりと気付いた。




「――ねえ、緊張しているのは、  だけじゃないんだよ。私も、何を言われるのかって、すごく、どきどきしているんだから――」

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11月30日 敏勘


「……でも、本当に彼女が好きなら、私はこんなこと言うべきじゃないんだ。」
船頭は目を細めて頷いた。「大丈夫、私は誰の味方でもないから」
そう、船頭も、彼女と同じようになにもしないだろう。完璧な中立。この箱では珍しい人間だった。

「……でも今回に関しては、若干  に、」
「いや違う。駄目だよ。彼女が何をしようがだからといって、私が悪いことには変わりはないんだ。私がいけない。迷惑をかけたのがいけないんだ――」

慌てて発せられた言葉に丁寧に耳を傾ける船頭は、紛れもなく旧友のそれだった。
船頭は空を見た。私は床を見た。彼女に対する二つの思いが巡り、揺れた。

「船頭は彼女の言葉を信じるべきだと思う」

何故ならこの箱の中では。
重要なのは通りでもなければ理屈でもない。

「船頭は、彼女の友達なんだから。」


彼女が事実を話したのか、私が事実を話したのか、それが事実なのか、私と彼女以外の人間には誰も確かめようがない。今となっては、何が事実かもわからない。それならば、失いたくないものを、信じれば良い。疑いたくないものを、信じれば良い。彼女のように何も知らない振りをして。

笑えばいい。

「さっきも言ったけれど、私は彼女とはあまり話さないんだ。それに、『四人で』仲が良いわけでもないんだよ」
「うん、うん、知っているよ――見ていれば分かるもの――」

そしてそれ故に、私と、星と心臓と船頭の繋がりは、余りにも悲しい。

誰か私の言葉を、烏滸がましいと責めれば良い。けれど、他人行儀な級友たちはそんなことを言わない。面と向かっては、決して言わない。それが無性に、怖かった。

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12月30日 1月29 日


彼女はその時失望しただろうか。期待外れだと、溜め息を吐いたのだろうか。


そして私と彼女は別れた。人がごった返すホームの中、私は意識して彼女の背中を見ないようにしていた。

(彼女はきっと何も判ってはいるまい。判る気もあるまい。ならば、いずれこの事実は私を殺すエースになるだろう。私を卑怯だと罵るか。いずれは。今まで通りの、その笑顔で。)

そんな暗雲が私の脳裏を駈けた。暫くの間そうしてから、私は携帯電話を取り出すと、文字を打った。六回推敲し、七回細かい訂正をしてから液晶を閉じる。
『……今日は有難う……感謝をしています……』

(いけないな、彼女はそんなに悪い人ではないだろう? 彼女を信じろ、人間不振の****!)

ネガティブな考えをそこで振り払い、私は意識して口角を上げた。「私はなんという幸福者だ!」
暗雲はそれっきり私に近付くことはなく、私のまわりを遠慮がちに蠢いていた。


「私はどうにも、最悪の状況を考えてしまう癖があるようだ。前向きに生きるようにしよう。人間はそんなに、怖いものではないのだから!」

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11月27日 足跡捜し


「どうして、どうして、彼女にしてしまったの。彼女は、なにもしないよ――」
「よく言われる。『彼女は、なにもしない』。その通り、彼女は確かになにもしなかった」
それは責められるべきことではないのだけれど、と付け加えると鞠はふと遠くを見るような目になり、言った。
「センセイ達と同じなんだ――紅茶先生みたいに、なにもしない」


徹底的な不干渉。完璧なまでの間違いのなさ。決定的な他人行儀。それを望み、私はそれを与えられた。しかし、それでも残る一筋の後悔は。

(だとしたら、私は彼女にどうして欲しかったのだろう。)

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12月30日 切り札


人は皆、切り札を持っている。いつでも、誰かを殺すことができる。
ただ、いつもそれらは伏せられているのだ。切り札が必要になるその時まで、存在すら悟らせない。

切り札が必要になった瞬間、切り札は切り札の形を眼下に現す。全ての切り札は表に返り、決定的に傷を与える。


切り札が使われずに終わることを、ただ願いながら生きていくしかないのだ。

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6月29日 起爆剤


「ああ、確かに言った。」


心臓は全てを知っていた。

(私が何故彼女に好意を抱いているのか。あの時何があったのか。私がどうしたのか。確かに私が彼女に話したことだ。したことだ。間違いのない、間違いのないことだ、確かに。)

「晒されていたのか」
そう言った私に、心臓は、悲しそうに謝った。
「私は。ずっと。面白がられていたのか――?」

何年も私はそれを恐れていた。そして恐怖を感じる度に塗り替えては、前に進んできた。懐かしい、それは最早過去のことだった。

毎日が戦争だったあの日々。私たちは戦争をしていて、私は見えない何かと戦っていた。
過去と今の狭間で、滅茶苦茶に、こぼれた剣を振るっていた。


「――私は昔彼女を疑ったことがあったんだ。しかし実際は、私の考えていたことは被害妄想でね。自己嫌悪に浸った私はそれ以来、ヒトではなく「彼女を」信じることに、したんだ。」
感情的な言葉が空っぽの箱に響く。信じる、とは。なんと独善的で、なんと烏滸がましい言葉だろう。その言葉を言う権利が、人にはあるのだろうか。
否、私には、あるのだろうか。
「私はどうしようもない馬鹿野郎だ」
因果応報、それ相応のことをしたにすぎないというのに。



「涙目になっているよ」
「……ああ、確かに涙目だな、私は!」
「そうじゃなくて、」
本当に。

私は目じりに指を滑らせた。確かに冷たい液体が、皮膚についた。

本当に驚いた時は驚いたと思う間もない。本当に悲しい時は悲しいと思う間もない。
ただその時の私は、切り札がもう殆ど返されていることだけを実感し、その涙の意味を、知る術はなかった。

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11月17日 目的


「たまにきみは、すごくさみしいねえ――」




「なんでそんなにお菓子を持っているの?」
鞠はおかしそうに聞いた。
そういえば確かに、私はなにかと菓子を持っている。そして配る。

最初は、必要最小限の間食として携帯していたのだ。
割安な袋詰めの物だとか、一人で食べるような栄養補助食品。小腹が空いたときの繋ぎだった。
それがいつの間にか、銀紙に包まれたチョコレートだとか、色とりどりの飴だとか、小分けにされた可愛らしいものに取って代わられ、気がつけば私は、何かと甘味を配る人間として認識されていた。あげたいからじゃないかな。私はぼんやりと答えた。
「だれかに、あげたいからじゃないかな。」

菓子を買うときに、誰か、を想定するようになったのは、いつからだろう。

誰か。それはオアシスだったかもしれない。桜だったかもしれない。特定の誰かなど、いないのかもしれない。しかし、それでも、誰か、の中には内包されている人間がいるのに違いはなかった。しかし私はそれから目を背け、ただ、自分のためだ、と、笑う。

(ピンク色のパッケージ。カラフルなキャンディ。着色料のかたまり。砂糖を濾したようなゼリー・ビーンズ。それから。)

(金色の包み紙のチューイング・キャンディ。銀色の包み紙のキシリトール・ガム。五粒百円のチョコレート。)


「いや、でも。きっと本当は、ある人にあげたいんだ。けれど、それが出来ないから、こうして鞠や皆にあげるんだ」

鞠は目尻を下げて少し笑いながら、冗談のように言う。
「たまに  は、すごくさみしいね」
「え、」
「ふとした瞬間の発言が。なんだかさみしい」



『私は、淋しい人間です』。
そんな言葉が、頭を過った。



「いや! 私は恵まれている人間だよ。世界の裏側の、明日生きるのもままならない人たちに比べたら。十二分に幸福者だよ――!」

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7月4日 闇の目

「そうだろうか」
幸せは言った。
「幸せは、相対的なものじゃあ、ないんじゃないか」
「そうかもしれない」
私は、答える。
「けれど、少なくとも、衣食住においては恵まれた環境の中にいるんだ。だから私は、世界の飢餓で苦しむ人たちのぶんまで、精一杯生きるようにするんだ。私は、生きなければいけない。生きなければいけないんだ――」

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