「どうして、どうして、彼女にしてしまったの。彼女は、なにもしないよ――」
「よく言われる。『彼女は、なにもしない』。その通り、彼女は確かになにもしなかった」
それは責められるべきことではないのだけれど、と付け加えると鞠はふと遠くを見るような目になり、言った。
「センセイ達と同じなんだ――紅茶先生みたいに、なにもしない」
徹底的な不干渉。完璧なまでの間違いのなさ。決定的な他人行儀。それを望み、私はそれを与えられた。しかし、それでも残る一筋の後悔は。
(だとしたら、私は彼女にどうして欲しかったのだろう。)
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