朝の失態を晴らすために、笑顔で近づいた。
「これあげる!」
太陽と狐と、ささやかなパーティーをした。その残りのビスケットだった。三人の腹に入る量など、高がしれていた。
ありがとう、と何の躊躇いもなく彼女はビスケットを受け取り、口の中に半分入れる。その様子を見てなんだか私は妙な気分になり、口の中に半分入ったビスケットを、指で奪った。
なに、と彼女は言う。なにをしたかったのか、自分でも分からなかった。ただ手の中にある半分欠けた菓子を見て、これをどうすべきかと思案した。食べてしまう気にはならなかったから、彼女の口に戻した。
彼女はそれを指で受け取って口の中に入れた。
菓子が砕かれたのだ、と思うと全身の調和が上手く取れなくなり、傍に来た太陽と彼女の話が耳を滑ってしまう。
彼女の指先についたチョコレートが、妙に目に付いた。
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