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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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7月14日 ブドウとじゃがいもは、同じ畑に生らない

「そっちって、自虐的になっているの?」
「いや、全然。あっさりだよ どうして?」

バレーも卓球も見ずに、体育館の入り口でぼんやりと決勝を見ていると、赤と浅と、それから例のチームが二人いた。私の試合が終わってからは、初めて話す二人だった。

「星と心臓がね、『こっちが負けていい気味って思ってるでしょ』だって」
「星が?」
「まだあのことを根に持っていると思ってるのかな」
「心臓は分からない」
「いつまでも根に持っているわけないよ。うちはね、人に嫌われることと誤解されることが嫌いなんだ。だから、そう思われるのは、」

赤は涙ぐんでいた。

四月から、ずっと練習してきた赤。制服で校庭を飛び回っていた時からいた。
でも強化チームに入れなくて、それでも這い上がろうとした赤。二回戦で味方とあたると分かって、必死で練習したチーム。最後まで諦めなかった。味方にはないものを持っていた、この学年全部から愛されたチーム。
色々なことを沢山話してきた。


「ねえ、赤。勝ちたかったのは、私だけだったのかな、頑張りたかったのは、私だけだったのかな、悔しいのは、私だけなのかな」

味方の前では泣かなかったけれど、そこでわんわん泣いた。

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7月14日 今だけはエデンの林檎を食べさせて欲しかった

教室でKと蟹と、話していた。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
「ごめんね、見にいけなくて」
優勝したのだ。良かった。少なくとも一つトロフィーを教室に置けて、と安堵した。

優しいKは、私が傷ついていると思ったようで、私の傍でじっとしていた。
雀の話を他人事のように聞きながら、(実際他人事なのだけれど、)しばらくぼんやりしていて、ふ、と視線を左にやると彼女が私を見て微笑んでいた。
「だいじょうぶ?」

彼女に近づくと、頬を人差し指で突いた。悪乗りした雀が滅茶苦茶に髪を撫でて、私を見て、御免、とからから笑いながら去っていった。
私は、してはいけないことをした。馬鹿なことをした。愚かなことをした。


「ごめんね」
「なにが?」
「いろいろと いろんなことを」


伝わらなかったに違いない。でも今は、それでもいいと思った。
大会は終わったのだ。私の三ヶ月も、終わったのだ。

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7月18日 宴の始末①

髪っていうのは、自分を隠すためにあるんだ」
「自分を?」
「そう。辛いときは髪をほどくんだ。負けた選手がタオルを被るように」






「朝はどうしようかと思った」
「誰だか分からなかったんだよ!」
彼女は目を丸くして私を見た。なにか言おうとしたようだが、雀の「かわいい!」という声にかき消されたから、結局は解らずじまいだ。
「ばっさり切ったねえ」
「まあねえ」
Kがよしよしと頭を撫でる。
オアシスは驚いたように私を見て、首を後ろに向かせた。「ない!」「きったんだよ!」



「ねえ、どうして切ったの?」
喧騒と視線の中で言葉が振りかけられた。声のするほうを仰ぐと、彼女が例の笑みで私を見ていた。
「思うところがあってね」



『お前は、話す時人を見ないね』――センセイの言葉を体現するかのように、私は下を向いていた。
彼女は、何も知らなくていい。東のことも、私が長髪ににこめていた思いも、髪を切った理由も。知らないからこそ私は彼女と向き合えるし、彼女も私に話せるのだ。

心臓と星がいれば、私は実害を被らない。あの空間は、矢張り異常だったのだ。

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7月18日 宴の始末②

かの円卓会議のとき、私が危惧したことは二つあった。



知っている。執着は弱みだ。負けだ。
つまり彼女は私の弱みだ。

髪は無かったから、逃げる場所は無い。『つまり、お前は自分に自信が無いんだな』。知ってます。知ってますセンセイ。だからどんなに論理的でない世迷いごとさえ、鼻で笑うことが出来ずに真に受けてしまうのです。
(例えば戯れの軽口、例えば道行く人の舌打ち、例えば試合中の暴言)

だから私はセーターを羽織った。身体が半分隠れた。
黄色は無表情でキャラメルを見ていた。



大学に進学したら
一緒にいられなくなりますね
住むところも離れていますし
きっと忘れてしまうんですね


それは嘘じゃない。でも、キャラメルが干渉してくるなら、これ以上は得策ではない。


なんと返事をしたらいいのでしょう。でも一つだけ言えること。
忘れてしまうことはない!




かの円卓会議のとき、私が危惧していてことは二つあった。
一つは世界が敵にまわることで、もう一つは彼女が傷つくことだ。

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7月17日 過去の清算

「違う。交代は梨」
「あれ、」
「まだいて。  にはまだ頑張って貰う」
「、ありがとう――」



そうだ。分かったでも頑張るでも了解しましたでもなくて、何故口をついたのが感謝の言葉だったのか――それが意味するところが分かったとき、私の中に結果がすとんと落ちてきて、私はそれに対する責任をとる必要があるのだと悟った。
全ての責任をとる、などという烏滸がましいことは出来ない。私は、自分の力をそこまで過大評価していない。そして実際私には結果を左右するような影響力は持ち合わせていなかった。はずだ。そう思っていたはずだ。


『エース、  をもっと使って!』

『  には、まだ頑張って貰う』


東は味方に手を貸した。エースの言葉はそれを受けていた。その証拠に、私に、繋げようとしていた。勝つために、ボールを。


『きっとね、エース以外がどれだけシュートを決められるかが、決め手になると思う』


世紀の言葉がよみがえる。



そして私は髪を切った。
理由を聞かれたら、東へのお詫びだとでも言っておこう。若しくは、失恋したの、と、笑顔で振り切ろう。
誰も責めないのなら、せめて私だけでも、私を、責めることにしよう。

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