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「努力は、素質に勝つよ!」
赤が叫んだ。
20-2。絶望的だ。
それでも這い上がって来る。勝ちに来ている。諦めていない。
私は見たかった。赤が勝つところを見たかった。赤がエースに復讐するところを見たかった。
『うちは、復讐したいんだ。エースも永遠も勿論努力をしている。努力をしているけれど、天性のものも絶対持っている。そういう人には負けたくない。四月からこつこつ練習してきたんだから。少し練習しただけで、才能で勝つような人に、負けたくない』
努力が才能に勝つところを見たくて見たくて見たくて仕方が無くて、私は敵である赤や浅が大好きだった。一生懸命な人は好きだ。大好きだ。周りが見えなくなるくらい入れ込む人が大好きだ。
「30点入れよう!」
しかし、エースのいるこのチームは万全だ。小手先の小細工など一網打尽にするこの勢い!
最早エースは楽しんでいる。負けるなどとは思っていない。
残り時間は三分を切った。
ならばせめて、私だけでも全力で当たろう。負けるかもしれないプレッシャーを感じながら、素質が努力を負かす瞬間を見ていよう。それが最後の、赤たちへの礼儀なのだ。
三ヶ月という時間はあまりにも短い。これがあと三ヶ月長くても、結果は同じだったのだろうか?
「お疲れ様。シュート入っていたね」
「しかし、一本しか入らなかったよ」
それを聞いた世紀が、「私なんて零本だよ!」と言う。「世紀は活躍したんだから良いじゃない! 私はシュートを入れなければただの役立たずだよ」
皮肉などではなかった。私に話しかけた彼女への返答で、彼女において使うとこの言葉の意味は変わる。
そして彼女にたいしても皮肉ではなかった。
彼女は軽く肩を叩いて労って、私はただ、それでも嬉しかったのだ。