「大丈夫?」
と、狐が目の前で手を動かした。最近はめっきり少なくなっていたけれど、どうやらいつのまにか物思いに耽っていたらしい。(大抵自分ではそれに気付かない。狐に指摘されて、やっと気付く) だいじょうぶ、だいじょうぶ、と早口で繰り返すと、狐は冗談として言った。「君はいつも、大丈夫じゃないときにそう言うよ!」
顔が微かに火照っている。鏡を覗いた私はうっすら赤い頬をしていた。
内向的になったぶん頭ではなく心で考えていて、直接的な感動は言葉ではなく体に現れるのかもしれない。そうだ、言葉も身体も嘘を吐けるけれど、より正直なのはいつだって無意識だった!
冷たい手で頬を冷やす様子は、きっとまるで恋をしているようなのだ、と、私はくすりとわらう。
なに、悲しむこともない。考えることもない。ただ、それだけでいいじゃないか、と、語ったアートを思い出していた。
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