うるり、と涙を滲ませた毬は黙って重苦しい空気を纏っていた。益々日本人が嫌いになる、と苦々しく呟いた。負けず嫌いで完璧主義者の毬は、相当悔しいに違いない。それは結果にではなくて、他の二つのチームの態度に対してなのだ。私はどんな発言をすべきか一寸迷い、沈黙した。
(エース達がいたから、あの時は楽だったんだ)
「けがとかしなかった?」
「――なんの?」
「さっきの、バスケ」
「ああ、全然大丈夫!」
「皆怒っていて、」
「気にしないほうがいいよ! 皆熱くなる人たちだから」
所詮些細なことなのだ。いつだって気にするのは傷ついた方だった、と、私は心の中で溜め息を吐きながら、彼女に背を向けた。
毬の気持ちを分かる人がもっといればいい、と思った。
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