後ろから誰かが抱きついていた。誰かの手は首に回されていて、鼻を啜る静かな音が聞こえる。
目が覚めると、目の前で彼女が泣いていた。
「おはようございます。みかなちゃん」
ただ、声は怖いくらいに落ち着いていて、私は訳の分からない恐怖感に襲われた。
「みかなちゃん、私の名前を覚えていますか?」
私は答えられなかった。
彼女はやっぱり、という顔をして、「みかなちゃん。私では夢の続きにはなれなかったのです」。
そう言うと私に抱きついて、首筋にがぶりと噛み付いた。
その瞬間、昼間の世界がぐらりと暗転し、彼女と私と、公園と、滑り台と、此の世界全てを真っ暗にした。
誰かが抱きついていた。
私はその様子を何処かから見ていた。
誰かは泣いていた。
よく見ると、抱きつかれているのは私ではなかった。
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