「変なの。厭なら最初から関わりを持たなければいいのに」
ワタヌキは歯切れ良く言った。
「まあでも、状況ってものがあるらしいよ」
ついでにそれは不可避らしい、と私が嘯くと、ワタヌキは不満そうな顔をして、そうかな、と呟いた。
「不可避といったって、避ける努力をしたようには思えないけれど」
「私は事情を詳しく知らないからなんとも言えない」
コーヒー・ゼリーをスプーンで掬いながら私は、ワタヌキの意見は至極尤もだと思っていた。しかし同意するわけにはいかなかった。それは、友人の否定を意味した。
「『人は人。私は私。』だよ」
「そうだね」
ワタヌキは渋々、と言ったように頷いた。その言葉は思考を停止させる、ある意味最も危険な言葉だと分かっていたが、お互いそれに関しては何も言わなかった。
真っ直ぐな人間は好きだ。だから私はワタヌキが好きだ。
「要は、強い否定は強い肯定と表裏一体なんだと思うんだ」
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