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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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7月14日 船頭多くして船山に登る

今一実感がわかなかった。
がんばったね、おつかれさま、すごかったよ、といった労いの言葉さえもどこか他人事のようにきこえてきた。
勝ちたかった。
エースと船頭が泣いていて、永遠は足を冷やしている。他の味方はただ放心している。


気がつけば次の試合のメンバーがベンチに座り始め、私は一人残されていた。
「撤収しよう」
桜がそう言って、お疲れ様、と笑った。団扇の風が気持ちよくて、有難う、と無理やり笑うと、桜も笑った。

味方は体育館の前に集まっている。あわせる顔がない。
「バレーの応援に行こう」
エースの切り替えは早かった。


階段を下りると、彼女がいた。目が合って、言った。「お疲れ様!」
その瞬間、東だとかジュースだとか青だとか、噛み付くだとか四点だとか色々なものを飛び越えて、私は彼女に向かって手を伸ばした。
「負けちゃったんだ、   !」
彼女は明るい声で私を励まして、私の背中を撫でた。私はあの時よりも引き攣った泣き声で、彼女の背中に縋った。下駄箱の前には誰もいなくて、扉の向こうに味方の背中が見える。
耳が彼女の頬に当たっていた。汗ばんでいたのも忘れていた。




勝ちたくない筈がない。勝ちたい。勝ちたいよ。勝ちたかった。
東。私はね、勝ちたかったんだよ。ただ、勝ちたかっただけなんだよ。
でもね、それで敵を蹴落としたりはしたくなかったんだよ。ねえ、東、私は間違っていたのかな、東。君だって、勝ちたかったんだよね、東。だから、自暴自棄だなんて言われて悔しかったんだよね、東。ごめん、東。エースは味方の暴言を知らないんだ。

後味の悪い勝ち方はしたくない、でも、負けるのはもっと後味が悪かったんだ、東。

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