東が負けた。
優勝候補だった東のチームは、後輩に負けてしまった。
「おしまいなの?」
「まけたの?」
「優勝候補だったのに」
「どうして、負けちゃったの」
赤は少し首を捻るとぽつぽつ言った。
「メンタル面が、弱かったんだ」
「メンタル面?」
「マッチポイントで、サーブが真ん中に落ちた。誰も拾いに行かなかったから」
「前の三人が行くべきだったのに?」
「そう。最後の責任をおいたくなかったんだ。チームを引っ張っていく人が、取らなきゃいけなかったのに」
「ああ、だから」
「それに東は、最初にアタックに失敗した。だからその後、強く打てなくなってしまった」
「東も恐らく分かっているんだ。自分がって」
「でも誰も東を責めないよ」
東のせいであるはずはない。だから誰も何も言わない。しかしそれが東を責めるのだ。
東は泣いていた。
「東が泣いているの、はじめてみた」
「ああそうかもしれない 東はあんまり泣かないね」
「いつも飄々としていた」
東の涙を見て私は少し泣いた。
「私がもう少しアドバイスすれば良かった」
赤も少し泣いていた。
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