泣くといいよ。わんわん泣いていいんだよ。東北は言った。その言葉を聞くのは二度目だった。あたたかくて優しくて、一つひとつの言葉には意味があり、それは心に染みた。だからそれに甘えないように、首を振って拒絶を示した。「私がいけないんだ。なのに、泣くなんて。それはとても自己中心的なことだよ……」。東北は何も知らない。何も知らないから、私にそんな言葉をかける。私を肯定しようとする。
『――――――――――!』
泣き出した私を抱えるように抱き締めて、アートはその時泣いていた。重なったのだろうか、何かが。そして私は知った。アートに依存心などない。ただアートは、優しく感受性豊かで、誰かの気持ちに同調しやすいだけなのだ、と。
「辛いときは、思いっきり泣いても良いんだよ。意味は無いのかもしれないけれど、我慢することなんてないんだから」
アートでない誰かなら、その時どうしただろうか。きっとこう言ったのではないか。「それは考えすぎだ。気にしない方がいい。彼女は君を、嫌いなんかじゃあないよ」。そして私は後悔する。甘えたことを後悔する。
いくら待ち続けても、時効は来そうになかった。この箱を出た後さえも、私の懲役は続いているに違いない。
許して欲しい。この箱から出る前に。
ただそれには、圧倒的に時間と、向上心が足りないのだ。
私は東北の手を握った。
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