彼女の視線に敏感なわりに、自分の視線には鈍感だったのだ。自分の目が、口が、眉が、今どんな形をしているのかなど、考えたこともなかった。興味がなかった。ただ、結果として笑っていた。昔は。今はどうだろう。少なくとも、怯えている。怯えさせる。試しに眉をしかめて、鏡を覗いた。少女が一人立っている。悲しいのか怒っているのか、判別がつかない顔をしていた。
今まで、顔にでる事実を隠せたことがあっただろうか。それに気づくのは、いつだってそれが済んだ後だったのに。
ごめんなさい、本当になんの意味もないんです。
その言葉は彼女にはもう届かないから、私は、目を自分のあたまに向けるしかなかった。
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