ちゃん、すき!
ありがとう、東北。私も、すきよ。
口口上に心臓も加わり、甘ったるい言葉と突き放した現実で場は満たされていた。さらに船頭が加わる。さらに花が咲く。それでも私はただ自然体でいればいいのは、なんと喜ばしいことだろう!東北は私の扱いを心得ていた。
楽しそうに喋る心臓、笑いながら菓子を差し出す東北、すかさず口を挟む船頭。小さな小さな、微、閉鎖空間の隙間から、わかっている、というように微笑みながら此方を見つめる彼女が見えた。心臓達はそれに気づかない。気づいたところで優しい二人は何もしなかっただろうけれど。勿論私も、何もしなかった。
皮肉なことばかりだ。この世は皮肉で満ちている。
こちらにむかった梨に対して私はどうすることも出来ずに、ただ泣きそうに微笑んだ。少しでも、このひねくれた指針が軌道を修正すれば良いと思ったが、今更そうなるようにはおもえなかった。
(どこで違ってしまったのだろう。何を間違ってしまったのだろう。気がつけば。掴んだものはどれも、私にとっては生硬に着色されたオリジナルで、)
それは紛れもなく真作であったから、私は皮肉だ、と言わざるをえなかった。
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