忍者ブログ

それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

2024.11│123456789101112131415161718192021222324252627282930

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

君に届け、この思い!

百合的な物語を綴るブログ。
事実を下敷きにしたフィクションだとかそうでないとか。

短編はこっち

最新記事は上の四角内。
基本的に古い順に並んでいる。

拍手

PR

◇登場人物

「私」…「彼女」を溺愛していた
「彼女」…「私」に溺愛されていた

友人達…見守ったりからかったり傷つけたり傷つけられたり
 黄色:面倒くさがり
 幸せ:天才肌
 狐:縁側仲間
 ジョーカー:好奇心
 キャラメル:被害者
 東:かつて溺愛されていた

拍手

◇概要



妄信物語(0904~0907)
 最期の春の話。
大会物語(0907)
 最後の球大の話。
夏物語(0907~09)
 夏と勉強と天王山の話。
祭物語(0909~10)
 最後のお祭りの話。
空物語(0910~12)
 からっぽの話。
織物語(0912~)
 過去の話と未来の話。

戦争物語(0809~0904)
 毎日が戦争だったころ。毎日が事件続き。
純粋物語(~0809)
 まだ何も知らなかったころ。毎日が平和に過ぎていた。


夢物語
 箱物語。ふわふわしたお話。


嘘吐きと偽善者の逃避行
 お話。
嘘吐きと偽善者の茶番劇
 お話。

拍手

4月28日 それが断絶の上の構築だとしても

気づかないふりをして、私はまた甘えるのだ。



すじのある短い髪を撫でながら私は思う。 真綿で首を締めている、と。

黙っていれば必然的にに沈黙は訪れる。これを気まずく思わないのは、もしかしたら(考えるまでもなく)私だけなのかもしれない。
「親しい間柄とは、沈黙を苦にしない関係だ」。
だとしたら距離を詰めたと思っているのは私だけで、この関係は酷くアンバランスに違いない。
不審に思わないのは慣れで、何も言わないのは許容だと信じたかった。

髪を撫でる。なでるというよりもたたく。肩に当てた指先を首から頬に滑らせたが、特に何の反応も返されなかった。
「今日は冷たくないはずだ」
嘯いた私の言葉になにか言葉を紡いだ気配がしたが、問いただすことはしなかった。 その程度のことなのだ。

また沈黙が訪れる。
頬から手をはなし、頭を撫でる。

ふとまわりを見渡すと、やはり何も変わらない。
この行為がどんな意味を持つのか、私は知っている。知っているが、なにもできない。
相変わらず、彼女は何も言わない。
ただ、全てがどうでもよかった。

拍手

4月27日午後

「いま、いーい?」

「……いいけど」

露骨に困った声が出てしまったかと一瞬危惧したが、長身のクラスメートは全く気にする素振りも見せずに、「にゃ―」とか「わ―」とか、よく分からない擬音を発しながら首に手をまわしてきた。

「うー、かわいいなあ……かわいいなあ」
「ありがとう」

あの約束を取り付けてから三日経った。彼女は飽きもせずに毎日私の元にやってくる。
その事実は特に驚くべきことではなかった(むしろ想定の範囲内だった)が、些か予想よりも密である。

肩口に顔を埋め、腕を背中に回して、じっとしている。それだけで幸せだと、全身が言っている。

「う―」

ふわふわとした雰囲気と人の良さそうな笑みとは裏腹に、彼女の(恐らく私に対する)言葉には有無を言わさぬ強さがあった。


おそらく彼女は、私に拒絶されるとは毛頭思っていないのだ。



拍手

4月28日11時23分

あれ。
彼女は真面目で潔癖で不干渉で無口で寡黙で口下手で。



目があった。「何をしているの?」


彼女は暫く夢見心地で考える素振りを見せた後、困ったように呟いた。
「接触してるの」


くしゃ、とかきまわした髪が乱れた。

拍手

4月28日15時

「何がそんなに楽しいのかなあって思って」

字面通りに受けとるなら中々強い言葉であるし、拒絶と取れなくもない。
しかし麻痺した頭はそんな毒すら薬に変えてしまった。しあわせ。たったそれだけのことで。

「うー」

言語化できないのを誤魔化すように髪を撫でる。顔を見なかったから、何を考えているのかなんて分からない。そして、わかる必要もない。
必要なのは自身の満足だけで、それ以外は二の次で。
いつも私は繰り返している。

「ん」

何をしたかったのかも忘れてしまった。何が欲しかったのかも忘れてしまった。ただ、その事実だけが愛しかった。


「『精神的に向上心の無いものは馬鹿だ』」。どこかで先生が罵っている。
しかしそれにすら耳を閉じ、私は髪を撫で続けた。

拍手

4月28日15時

「貢いだの?」
机に無造作に置かれていた菓子箱を摘みながら友人が言った。

何故皆そういう表現をするのだろう。あの旧友も目の前の彼女も。
何か上手い言い訳をしたかったが出来なかったので、「ああ貢いだよ!」。冗談めかしたつもりだったが、語気が強くなってしまったようだった。(その証拠に誰も何も言わなかった)。
いつだって雀に悪気は無いのだ。


「みつぐ、ってどんな意味なんだろう」
「しらね」

ただ漠然と、感情的な人間は嫌いだ、と思った。

拍手

4月30日14時57分

黙って掲示板を眺めるクラスメートに菓子箱を差し出すと、「ありがとうございまーす!」と、わざとらしい感謝の言葉が返ってきた。わざとらしい、といえば嫌に感じるけれど、彼女はいつもそうなのであまり気にしなかった。『演技臭いことなどいつものことだ』。
あの旧友に言わせれば彼女は「偽者」であるし、同部活の人間に言わせれば「偽善者」だそうだ。がしかし、私はそうは思わない。ただの善を偽ってすらいない只の悪人のような、つまりこれが彼女の素だということだ。
(だとしたら、わざとらしい、という表現は聊か見当違いである気もするが、それ以外にしっくりくる表現を私は思いつけなかった)

クラスメートは、その場で菓子を口に放り込んで咀嚼した。沈黙が訪れた。
そもそも私が黙って差し出したのは、口の中に同じ菓子が入っているからで、だから勿論私も声を出せない。
空になった菓子箱を右手の先で摘んで、左手で彼女の頭を撫でた。特にいつもと変わらない。
つまらなかったので頬に手をあてると、むぐむぐと菓子が砕かれている感触がした。彼女は何も言わなかった。

広げられたノートは、只単純に勉強したかったのか、それとも無意味な沈黙からの脱却か、判別がつかなかったがどちらでも大差はない。
ふ、と視界の端を掠めた気がして顔を上げると、旧友がこちらを見て笑っていた。傍には何の因果か「本物」の二人が座っていて、怪しまれたら敵わない、と曖昧に笑って目を背けた。

今日は動いたから抱きつかせて貰えない。駄駄をこねても、「ね、」とあやされてしまう。
髪を梳こうと思ったが、短すぎて出来なかった。
肩を叩いてその場を去ると、友人が私をみて微笑んだ。その真意を深読みして、私はまた曖昧に笑った。
旧友が指で作ったハートが瞼の裏をちらついた。

拍手

5月2日15時2分①

「あ、イケメンだ」
「イケメンだよね―」
「私を見て怯えた顔しないでよー」

何故か次々に言葉が投げ掛けられて、私は閉口した。もし人生に「もてじかん」があるなら、それは間違いなく今だ。いつもなら気の利いた会話の一つや二つをしようと努力するけれど(しかしあくまで「努力」だ。成功しているか分からないし、遊ばれているだけかも知れない。とにかく、私は会話が下手だ)、今はそんなことをする余裕はない。

いつだっていっぱいいっぱいで、様々な状況を想定してからでないと動けない臆病者だ。逆に、そのプロセスさえ経てしまえば、簡単に飛び越えられてしまうということでもあるけれど。
アドリブが苦手だから、曖昧な笑みをのせてがくがくと頷くことしか出来ない。
はやく、はやく。私の背後に座っているあの子のところに。
「じゃ、そういうことで!」


私は腕を伸ばして肩を叩いた。「これあげる」。金色の包み紙を机に置く。首に抱きついて、頬を寄せる。かわいいな、と口の端で笑う。
ほら、簡単に飛び越えられた。

拍手

カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析