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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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5月2日11時45分

ああ、宙ぶらりんだ。
一番廊下に近い列の、前から二番目に座っている彼女をみて私は思った。

彼女の次の行動を予想してみる。一、いつも昼を共にしている二人に声をかける。二、同部活の友人達(素晴らしいことに、普段喋っているところを見たことがない!)に声をかける。三、一昨年仲が良くて、今年再会したあの友人に声をかける。
勿論その選択肢の中に旧友と私はいない。それぞれ理由は違うけれど。
彼女の動向を観察するのは、親が子を見守るのにも、狼が羊を狙うのにも似ていた。

予想は一。大穴は二。観察に忙しくて、自分が所属する集団の話を私は全く聞いていない。それができるのは彼女達との間にそれなりの信頼関係を築けている(と、信じている)からで、私は彼女達に感謝をしている。

「いれてもらえますか?」「あれ、」
「あっちはあっちでできているから、」

後ろで交わされる会話を、私ははっきり聞いた。皮肉にも真後ろだった。三。予想通り。特に驚くような結果ではなかった。
戸惑ったような空気も、こちらにくる直前の視線も、皆一様に淡々と私の肌を刺す。「でも、まあ、彼女は皆と仲が良いタイプの人間だから、」いつか旧友が言った言葉と、彼女自身が言った言葉とが木霊する。

かつての私がそうだったように、本人が良ければそれで良いのかもしれない。むしろ、そうであるべきだ。しかし、それでも漠然とした引っ掛かりがあるのは、おそらく私の性格と彼女へのわけのわからない感情が原因に違いない。

「そう。さみしくないの、ってよく聞かれるけど。全然へいきなんだ、ひとりでも」

様々な人間関係の構築方法がある。ジョーカーや雀や円周率や、そして彼女のような。どれも間違ってなどいないはずだ。誰にもそれらを否定する権利などない。 あってはならない。

ふと、去年のことを思い出した。可愛い二人組みと、それから彼女と。三人。
ああそうだ、私はただ、ひとりでいる彼女を見たく無かっただけのだ。髪を撫でるのも、なにかと気にしたのも。
でも私はこの集団に属している限り、永遠に彼女を、そう、恩着せがましく言うなら、助けることなどできないのだ。私が一人になるか、彼女に惨めな思いをさせるかの二択しかない。
しかし一方で、私などに助けられる彼女は見たくないかもしれない、などと思っているのだから始末におえない。私が気にするのはやはり世間体なのだ。

彼女に対するわけのわからない感情と、「傍ら痛し」。どちらが先にあったか私は知っている。知っているからこそ、身動きが取れなくなったのだと、その場では気付かないふりをしていた。

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5月2日午後

「わすれものをしたんだ」
そう言って下駄箱を飛び出した。わすれもの。階段を一段飛ばしで駆け上がる。はやく。はやく。一周と半分繰り返したところで、帰宅集団にぶつかった。皆談笑している。あ。私はにんまりと笑って最後の二段を蹴飛ばす。呆けた顔を視界の端に引っ掛けて、二周目。「びっくりした」。手すりを挟んで声が聞こえる。またにんまり。「ばいばい!」。階段を蹴るのを止めて、「ばいばい」。集団の一人が私の顔を驚いたように見た。気付かないふり。そのまま階段を駆ける。今度は二段飛ばしだ。忘れ物は見付かった。

髪を撫でた感覚は、まだ少し残っている。それはかつて、純粋に楽しかったあの頃の感情にも似ている。しかし今のそれは、多大なるリスクの下に得られているのだと、その時の私はまだ気づかなかった。

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08年4月25日(若しくは、とある無垢だった頃の純粋な記憶)

眠っている人間を観察するのが好きだ。
誰もがこの時だけは、穏やかな様相を見せている。
怒っていた人間も、苛々していた人間も、皆一様に寝息をたて、静かに睡眠を摂取する。活動している間、彼らがどんな人間だったとしても、この時だけは誰もが大差の無い表情をしている。

日だまりで丸まる子猫のように、腕に頬を乗せて眠る彼女を視線の端に引っ掛け、頬杖をついた。 



それが後に重要な意味を持つことを、その時の私はまだ知らない。

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5月5日1 時59分

思い出したくもない記憶が時折どっと押し寄せて来るときがある。
それをさらりと受け流せばいいものを、また再び吟味し直してしまうのだから、被虐趣味でもあったのかと自分を疑いたくなる。そうすることでより鮮明に記憶に焼き付けてしまうのに。
ごろりと寝返りをうつと、一時間くらい前に聞いていたヘッドフォンのコードが首に絡まった。

音楽も字も彼女の記憶も、何も私の気をまぎらわせてはくれない。そう、彼女の記憶さえも。自分を自嘲するように笑おうとしたが、うまくできなかった。そして、じちょう、という言葉がさらに私を苛立たせる。
乱暴にコードを引っ張ると、がつん、と大きな音が闇に響いた。ヘッドフォンとレコーダーがぶつかったらしい。


苛々して他にあたる。悪いのは自分だと頭の中では分かっているのに。いつからこんな性格になってしまったのだろうか、と原因を探ろうとするのは、やはり他に責任を見いだしたいからに決まっていた。

昔に戻りたい、と思うのは過去の美化だろうか。それとも、ただのナルシストなのだろうか。
現状に満足せずに、水面に映った幻想を眺め続ける。そういった点ではどちらも同じように思えた。結局「今」の無い物ねだりなのだ。


「****に会いたいなあ」
ぽつり、と放った言葉は呆気なく闇にとけていった。



束の間の休息は呆気無く終わるだろう。そしてまたふわふわした毎日が始まる。

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5月7日16時57分

なんだかふわふわする。
目の前で友人が話していることも、ふと気を緩めると、あっと言う間にふわふわに侵食されてしまうのだ。
あれ、と思ったときには取り返しのつかないくらいおいてけぼりになっている。

「だいじょうぶ?元気出して」

友人が心配そうな声で尋ねる。私はいつも元気だよ、とおどけて言うと、「嘘だあ!」とからころ笑った。私もつられて笑った。私は間違えなく元気だから、なんだか変な感じだった。
一体何がいけないんだろう、と首を捻ると「そうおもわない?」。友人が僕に意見を求めた。あ、またおいてけぼり。ふわふわは一瞬でやってきて、一瞬で消える。そのくせ私の時間をごっそりさらっていく。不思議なやつだ。

そういえば、ふわふわが出てくるのは今日が初めてじゃない。
休みが始まる前の土曜日くらいに、別の友達とお弁当を食べていたとき。ふわふわはやってきた。私は輪とは別の方をぼんやり眺めていた。眺めていて、手には金色の包み紙。何か考え事をしていて、「ねえ、きいてる?」「あ、ごめん!」 そんな会話を二回繰り返した。ふわふわだ。そして私は席をたった。席をたって、私は何処へ行ったんだっけ?
ごとん。
「うわ」
何か分かりかけたのに、それも全部、がたごと揺れる電車にたべられてしまった。




電車から降りて狭いホームに立つと、またふわふわがやってきた。でも今は一人だから、そんなこと気にしなくて良い。私の頭をふわふわで侵食してしまえ。

ふわふわに侵食される直前、今日はあの子の髪を撫でていなかったことが頭を掠めた。

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5月9日21 時48分

普遍性が欲しかった。ただの「好き」だけでは、呆気のない終わりが見えてしまう。「好き」は最高値で、それ以上上がりようがないのだ。あとは下がるしかない。それでは駄目だ。常に不安を抱えて生きるなど、真綿で首を締めるようなものだ。

だから好かれるのは悲しかった。だから普遍性が欲しかった。両親からの愛のように、常に永続的に恒久的に与えられるものが。そんな愛情が欲しかった。


そして私は見つけた。見つけたというよりも理解した。


「俺  ちゃんの好みのタイプが気になるんだけど」
あー、確かにね、とざわつく旧友たちを他人事のように感じながら、私は言った。

「他人行儀に優しい人」
 

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5月14日11時23分

ふわり、と手を前に出して左右に振った。

「なに?」

体育の後の、赤い顔をして一人で座っている彼女の頭に手を伸ばすと、汗かいてるから、と手を避けて背中を倒した。
その椅子は教室のものとは違って背もたれが無いから、そのまま倒れてしまうのを妨げられない。そして構わず手を伸ばすと――それは加虐癖や肉体的接触願望というよりも、単純な好奇心からだった――そのまま彼女は連なった椅子に倒れこむように倒れる、かと思われたが、意外なことにするりと足の隙間を縫って零れてしまった。それも微動だにせず。(漠然と、案外腹筋がある、などと思った)

「何をしているの?」
「頭を撫でようと思ったら、汗かいてるからって逃げられちゃったの」

普通に答えないでよ、と笑う友人。
彼女は私の傍にはいないで、ぼうっとしている。バスケの試合で目に付いた、彼女のチームの駄目なところを教えたかったが、なんとなくおこがましい気がしてやめた。(それは欠点を指摘するということがか、彼女と話すということがか、よく分からなかった)
友人と私と、それから微妙な位置に彼女が一人で立っている。おなかが痛い筈だったが、そんなことより私は私のことで精一杯だった。持っていた教科書で足を引っかく。分からなかった。私といることが駄目なのか、それとも自分の意思だったのか。(ただ、いつも被虐的なことは大抵杞憂と被害妄想に終わる) 星は、優しい子だ。だからきっと人を非難しないのだ。

(にげないで)
(ひとりにならないで。おなかがいたくなっちゃう)


考えていることはいつも二つだけだ。それをどう誤解されようと、私は何も言わない。だから、他人行儀な愛が欲しい。だから、早く離れたい。そう、仲良くしたくはない。むしろ、私はそれを恐怖している。足がかりも好かれることも、私にとっては同義なのだ。
だから、たとえそのことで私が痛々しく見られようと、そういうものだと享受するだけの自我と勇気は、残さなくてはならない。そしてそれは様々なものを捨てることにより、残すことができた。

気がつくと、彼女は勇敢にも出来上がっている閉塞した三人の世界に入ろうとしていた。

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5月15日12時

「あげる」
差し出すと、きょとんとした表情で、軽い礼を述べた。私の奇行など、いつものことだとでも言うように。そしてその一方で、「かわいー」などと声が聞こえる。彼女の傍に居る彼女の友人が言っているのだ。私に関する評価だが、私に向けて言ったのではない。だから私は目を細めて、そっと彼女の頭に手を置いた。静かに撫でる。

「え、そういう立場なの?」
彼女とお弁当を囲んでいる友人達が、面白そうに声をかけた。
「うん、私  のこと大好きなんだ!」
「そういうことらしいよー」
笑いを含んで他人事のように言う彼女は、今日は怒っていないようだった。しかし、彼女が私の言葉、特に彼女を褒めるものを、誰かに対して言葉を紡ぐのは珍しいことで、なんだか妙な気分になった。おかしなことに私は、彼女と私の間に、誰か別の人間が介するのがとても不思議な気がしたのだ。そうだ、そういえば私は、彼女が、「彼女を好きな私」について、社交辞令以上の感想を漏らすのを聞いたことが無かった――黄色の話は間接的だし、私が危惧したものは全てが杞憂だったのだ。

「かわいいなあ」。髪を撫でながら思ったままを口にする。すると驚いたことに、口々にえー、とかでもー、とか声がかけられた。
「   よりも花を差し出す     のほうが可愛いよ!」と星。「えー」と心臓。そして極めつけは「      のほうが、」と濁した船頭の後を掬って「私より     のほうが可愛いよ」と繋げた彼女だった。私はそのリップサービスになんと返事をしたら良いか分からず、また曖昧に笑うしかなかった。否定は無限に続く会話の始まりだし、この場合、謙遜は自虐でしかなかった。だから、「もう、   はかわいいなあ」と彼女に頬を寄せた。
(ぴたり)
一瞬と止まった空気に、知らない振りをすれば良いものを、「あ、ひかれちゃった」と思ったままを口にするものだから、だから私は駄目なのだ。(私は彼女の友人達が望む私以外の私を演じてしまったのだ。そうだ、ここには黄色も幸せもいない。この半アウェイな状況を、私は友好的な友人達のために、忘れていた)

「へえ、ちょっと意外かもしれない!」
笑いながら言う船頭。
「えー、そんなことないよ。だって、中二のときは、」
東のことが大好きだったんだよ。と言ってから(あ、しまった)
「好きだったって、今は?」
「うーん、あんまり」
接点も無いしね、と言い訳のようにもごもごと口を動かしながら彼女の顔を見ると、「  ?」と東の名前を呟いていた。東を名前で呼ぶのは彼女たちが旧友であることの証だった。
「えーと、それも可愛かったから?」
「うん!」
へー、と友人達が不思議そうに言う。
「え、でも東と彼女ってあんまり」
「意外だよね」
「そうかなあ。東も彼女も似てると思うよ」

(他人行儀に優しくて、作り笑顔が上手で、字が右上がり。親切なのに干渉しなくて、私に関心が無くても優しい人たち)

膝には広げられたプラスチックの弁当箱があり――なんと中には缶詰の果物(多分あれは白桃だ)がでんと詰まっている。
私はそれをぼんやりと見ながらお昼を囲む友人たちの会話を聞いていた。意地悪に纏めると、東より彼女のほうが良いと勧めている。そして話題は静かに逸れていく。
「いいの?待ってるよ」
あ、と振り返れば、友人たちが私を待って談笑していた。
私は彼女に手を振ると、私を待つ友人達の方へ駆けていった。


お弁当を広げたベンチの傍には、シロツメクサが沢山咲いていた。ただそれだけの話だった。

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5月18日15 時30分

気持ちが悪かった。人間との肉体的な接触が。
特に幸せやJのような、ホモ・サピエンスとしてではなく人間としての生理的行動を連想させるような触り方は。
Kは大丈夫だったところを見ると、もしかしたらそれだけではなくて、もっと根本的な嫌悪があるのかも知れなかったが、それを言語化することは危険だった――認識は災いだ。知らない振りをするのが正義とは言わないまでも、最善だと学んだばかりだから。

「来ないでよお!」

幸せは追いかけてくる。話しかけてくる。どうして放っておいてくれないのか。どうして干渉するのか。恒久の関心なんて無いくせに、べたべたとして、生々しくて。
自分が人間だと自覚してしまいそうになる。それは嫌だった。人間である以前に、**の*の*の****でいたかった。

「来ないでったらあ!」

やめて、やめて、私に近づかないで。
飛び込んだ教室には彼女がいた。


指先に触れた髪からは、生々しさも人間臭さも感じられない。それは彼女が人間でないからなのか、もしくは、人間であるあまり匂いが分からないのか、冷静でない私には考えることが出来なかった。
ふくんだように(被虐的に言うなら、若しくは馬鹿にしたように)笑う。「笑われちゃったあ」。私は返事を求めていない。彼女も何も言わない。髪は柔らかい。彼女は、珍しく機嫌が良い。抱きつく私に、なに、と問う。私は黙っている。彼女も、黙っている。



何、と問われた答えを私は持ち合わせていない。ただこの不愉快な気分を癒してくれるのは彼女だと、私は根拠のない確信を持っていた。そしてそれは事実だった。

いつもと同じ蝸の時間が流れる。私は、やっぱりそれを甘受するしかない。

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5月22日12時45分

欲求不満と好奇心と人恋しい、の境界がとけた。
「噛み付かせてよ」
その言葉は、その言葉の意味失い、現実味を奪っていた。あの時と同じだった。

(私はどうしてしまったのだろう。彼女以外の人間にそのようなことを思うなんて。まるで私が本物のようだ。)

腕をぐいと引っ張って、椅子から引きずろうとした。三秒後に自分の本意に気づき、戦慄した。

(違う、私は寂しいだけだ。人恋しいだけだ。甘えたがりなだけだ)


彼女は、今日は席についていなかった。珍しいことだ。
私を遠ざけるためかもしれない。だとしたら私の作戦は成功したことになる、それなのに私は、「ねえ、ねえねえ――……」「なーに」「なんでもない」


「ほら、あっち向いてなさい」
頭をつかまれ、ぐるりと顔を向けられた先には、彼女がいる。机二個分くらいの、笑顔。(なんで私に近づくの)
やめてよ、やめてよ、と喚く私と、不審そうな彼女の、視線がするりと滑る。摩擦係数零、ただの偶然。なのになのに、それ以上の意味を見出してしまい私は動揺した。
(やめてやめてやめて、今は君が怖いんです。分かっているんです。君は星に何か何か言ったのでしょう、だから君は余裕があるのでしょう、いつもと違うことをするのでしょう、だからわたしはわたしはわたしは)

「ねえ、噛み付かせてよ!」
友人Aが代替人である筈は無い、でも今の私には、間欠泉のように吹き出る好奇心を彼女にぶつけることは出来ないのだ。

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