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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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6月13日

「バスケを見ていればわかるよ。 は運動部の人にも好かれているって。見ていればわかるよ。それを他人行儀ととるかもしれないけれど」
「ありがとう」
少なくとも嫌われていないことはわかる。しかし好かれているのだろうか?大きな人や小さな人は分からないけれど。昔から私を知っている人は、私に対して割と好意的に接してくれる。

しかし、私はそれが長く続かないことを知っているし、私から近づけば簡単に壊れてしまうことも知っている。
私の上っ面を見て「私」という人間を過評価し、そして実際に会って失望するのだ。
その寂しさを知っているから私は絶対に自分から他人に近づかないし、誰かに積極的に関わることをしない。


だから私は彼女が好きなのだ。彼女は私という人間が好きで優しくするわけではない、誰に対しても優しいだけなのだ。
もし彼女が私という人間が好きで親切にするのであれば、私は彼女を好きになりなどしなかった。
そういう意味で、私は他人行儀な人間が好きなのだ。

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6月15日

世紀はエースに抱きつき、永遠は私の頭を撫でた。

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6月16日①

久しぶりに頭を撫でた。

久しぶりに悪い思い出がゆらゆらと現れて、黒いものに侵食されつつあった三時限目。無性に人肌恋しくなって、都合よく彼女は一人だった。

無言で手を置く。
彼女は私の存在をちらりと認識すると、口角を上げて再び机のほうに向き直った。
(そういえば昨日も同じことをしたわけだから、恐らく慣れたのだ。)
ごしごしと撫でると、癖の入った短い毛が、指の間に絡みつく。清潔で筋のある髪。しばらくその感覚を楽しんで、ぼう、と手のひらを頭に乗せた。
「重いよ」
頭を沈める仕草をして――少し笑って言う。
「う」
多分私は情けのない顔をしている。目が合うと、少し困ったような影がよぎる。(それは恐らく人を気にし過ぎるほど気にする私だから、若しくは彼女だから、気にかけた、気にするまでもない一瞬だったけれど)
「そんなかおしないで」
「かお」
「わらって」
彼女が呼吸で笑ったのが伝わった。

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6月18日17時30分

東と話した。
東の分け隔ての無い物言いは軽く月日を飛び越えて、私の中にすとんと落ちた――この瞬間だけが切り取られ、どさりと五年前に。
するすると流れる言葉たちを耳の中に押し込んでいくのは、おそらく昔と変わらないスタンスだ。私は最悪話す必要はないし、その点で東は、例えばJと同じように楽である。
顧問の話、大会の話、友人の話、私の去った部の話……東の口から溢れる言葉は留まることを知らない。要は私は、東にとって代替可能であるわけだが、だからこそ、ということなのだろう。(やはり他人行儀なのが好きなのだ)

東は言った。
「うちは、人間関係とか、どうでもいいんだ」
要約するとこうだ。
「自分は嫌いな人間に対しても態度を変えることがない。それはつまり人間というものに興味がないからだ」
私は、斜めに見すぎているのだろうか?
私は東が急に怖くなった。五年前も今も、笑顔で私に接するその一方で、心の中で罵倒している可能性は零ではないのだ。東の中に彼女を見ようとした――見えたのは東自身で、当然なことに彼女ではなかった。


そうしていると、ふとした瞬間に、東と話している自分と、自分と話している東が、なんだか抽象的な概念にみえるような、言いようのない妙な現実味の無い気持ちになる。私は東の目を見た。東は構わず話し続ける。私はその抽象を振り払おうと躍起になっていた。

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6月18日18時

帰ろう、とはどちらも一言も言わなかった。
ただ下校時刻になって、教師たちが見回りに来た。(気のせいだといい。彼らは私と東をまじまじと見た。確かにこの組み合わせは珍しかった。)
東は着替え始めた。私は少し迷った末顔を背けた。東だからと言うわけではなく、只なんとなく気まずかったのだ。
「直帰?」
「うん」
教室を出る直前、私は東の頭を撫でた。
恐らく東はそれに慣れていなかった。沈黙。「みんなそういう反応するんだよね」。私は当然のことに気づき、言う。
身長が高くて、撫でにくい。誰と相対して、と考えると彼女以外であるはずが無い。彼女は小さいのだ。

教室には二人しかいなかった。そしてこの階にも。

ふ、と好奇心が湧き上がった。
彼女にしたことを東にしたら、と思うが、都合の良いことに東と私は精神的にも遠かった。(リスクは負いたくない。そう思うだけの羞恥心はまだ残っていた)

東と私は二人で階段を下りた。五年前の私は、これを望んでいたのだろうか?願い事は、意外なところで叶う。


私は、ただなんとなくという理由で、東に紫を頼んだ。
閉鎖空間の中で、それが意味することを忘れていた。

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6月18日16時20分

私は駄目なのだ。自己中心的で。そこまで分かっているのに、行動に反映されない。常に欲望に忠実だった。

(ふとした瞬間に私と同じ土俵におちてしまった彼女を見て彼女がもう癒しになれはしないのだと思うことや、本当に彼女のためを思っているのなら今すぐにでも彼女の髪に触れた手を離さなければいけないことや、たくさんのことたちをいいわけにすること)

私は彼女の口からその言葉を聴くまで止まれない。止まらない。
「私はいつでもほんきだよ」。その言葉を彼女がどうとらえたのか、知る術はないのだ。

(東くらい離れていれば良い。東、東。このこはこわいんです)


彼女に抱きついた。
肩口からは良い匂いがして、私は顔を埋めた。
彼女の去り際は意外なことに笑顔だった。

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6月19日16 時10分

世紀は朗らかに笑った。
彼女の他の友人達と同じように、何の躊躇いもなく。
昨日までのように、私に対して気を遣ったような、対応の仕方を今一掴めないでいるような、そんなはりついた笑い方ではなかった。

(何故だろう。東のことが知られたのだろうか。差し出がましいという話になったのだろうか。何か悪いことをしたのだろうか。)

如何せん心当たりが多すぎた。疚しいことがありすぎだ。そしてネガティブにものを考えすぎだった。

変化が不安で堪らない。
変化が悪いと言うのなら、私は恐らく保守的な人間なのだ。
テンションを飛ばしてしまえば楽なのだろうか、(否、それはあまりにもハイリスクだ。)



狐と太陽の話は、私の好奇心を削いだ。安定すると何かに入れ込むことができなくなる。
ただ太陽に関しては嬉しいのか悲しいのか分からない妙な涙が出てきて、自分でも閉口してしまった。ジョーカーは何も聞かなかったし、狐は昔からそうであった。幸せも黄色も彼女達も、もう殆ど箱の中だ。

それは断ち切りが完了したことに違いはなく、私はそれを嬉し泣きということにしておいた。



エースと世紀と永遠を思った。彼女達は私の遠くにいる。

私は世紀に手を振った。

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6月18日14 時10分

端のクラスは自習室になっているとかで、私はジョーカーを探しに行った。
私は見栄っ張りの理屈屋だったのだ。

教室の扉から顔だけ出し、ぐるりと教室を見渡した。
意外なことに、エースと目があった。

エースは、彼女や東のような旧友特有の口角の上げ方をして、少し鼻で笑う。

その瞬間には彼女も東も重なりはしなかったのだけれども、妙に様になっていたそれは、私のミーハーな心(若しくは別の場所)を著しく擽った。

きっとギャップに弱いのだ。ボールを追いかけていたときの私に対した素っ気なさと比べて。




「ねえ、鼻で笑ってみて!」
彼女は少なくとも笑っていた。ただ、周りが私を弄った。
彼女では何の動揺もしなかったに違いない。

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6月20日8時25分

「キャラメルさんはどうしたの?」
「さあ?朝から泣いているけれど」
「何か聞かれた?」
「なにも」
「ああそう、ああそう、
――まあいいや」

そう、とにかく動揺していた。
彼女は面倒くさそうに、次の時間の小テストの勉強のため、机に視線を落としていた。
私は被虐妄想に襲われてしまう。相変わらずわけの分からないものは苦手で、恐怖の対象だった。(さらには昔のことを思い出してしまうからだ)
追い詰められた獣の行動は二通りに分けられるという。尻尾を巻いて逃げるものと、噛み付くものだ。私はどちらか、分かりきったことだ。



『海さんは話は聞くし拒絶はしないと思うよ。彼女が私を突き放さないのと同じ理由で』


おそらくキャラメルさんはそのことを気にしていない。
ただ、もしも、もしも、彼女にその質問をしていたとするのなら、それをキャラメルさん自身が重ねてしまったのだとしたら、と余計なことまで思案してしまうのは、性格ゆえなのだろうか?
私は心配性だ。ボールを追いかけるときも、もしもエースが潰されたら、と思ってしまう。その何万分の一の可能性を恐怖してしまう。

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6月20日12時45分

朝の失態を晴らすために、笑顔で近づいた。
「これあげる!」
太陽と狐と、ささやかなパーティーをした。その残りのビスケットだった。三人の腹に入る量など、高がしれていた。

ありがとう、と何の躊躇いもなく彼女はビスケットを受け取り、口の中に半分入れる。その様子を見てなんだか私は妙な気分になり、口の中に半分入ったビスケットを、指で奪った。
なに、と彼女は言う。なにをしたかったのか、自分でも分からなかった。ただ手の中にある半分欠けた菓子を見て、これをどうすべきかと思案した。食べてしまう気にはならなかったから、彼女の口に戻した。
彼女はそれを指で受け取って口の中に入れた。

菓子が砕かれたのだ、と思うと全身の調和が上手く取れなくなり、傍に来た太陽と彼女の話が耳を滑ってしまう。
彼女の指先についたチョコレートが、妙に目に付いた。

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