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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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6月5日

(いつでも他人行儀な君に会いたい)


つくづく思うのだ。私は彼女を愛していたわけではなかったのだ、と。

傷付くことが嫌いなだけなのだ。何かを得るための努力を怠るくせに、欲しい欲しいと言い続ける。私は都合が良すぎる人間だ。だから、きっと彼女を好きだと言い続けるべきではない。私は彼女が好きではないのだから。


髪に触れても、何も感じない。ただ、髪の感触が右手にあるだけだ。
そして私は確信した。『私は彼女が好きではないのだ』。
彼女は変わったのだろうか――かつては負の方向だと思っていたそれは、今は見当違いだったのかもしれないと思える。ただ正の方向だとしても私にとっては負だ。
彼女のことに関して、確かめるのは止めようと思った。何の意味もなさない。深く考えるのも止めた。時間の無駄でしかない。深読みもやめた。どうせ間違っているのだから。

私は矛盾していた。他人行儀が好きなくせに、近付いてしまったのだ。





私は彼女を愛していた。
初めて会ったときも、裁縫箱の名前を読んだときも、足の早いのを誉められたときも
船を漕いでいたのを起こしたときも、隣の席で寝顔を見ていたときも、舌の上の飴をみたときも
四月に名簿を見たときも、青を頼んだときも、写真を撮ったときも
円卓の一員だったときも
病院に行ったときも、教室の机で泣いたときも、喫茶店で話をしたときも、君を放課後の階段上に呼び出したときも
頬に触ったときも、押し倒したときも
髪をすいたときも、信じなかったときも
私は彼女を愛していたのだ

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6月6日

妙に視線が絡む。
自意識過剰ではない。私は彼女に対する関心を失っていた。残念なくらいに。

(どうせまたあのときのように)
今度は悲観的ではなく投げやりに構えていた。あの時から、気づかないということを恐怖するようになっている。にこにこと笑う笑顔の裏で、情報が錯綜していた――一人知らないでいるということが、痛々しい。それが、腹立たしい。



奉仕掃除の当番を決めるとかで、彼女は黒板の前に立っていた。中途半端に孤高で、中途半端に真面目な彼女のやり方は、この立方体の中でどのように思われているのだろう。(そんなことを気にしているのはこの中で確実に私だけなのだけれど) 私は一昨日ジョーカーにした話を思い出していた。

「全体が個人の集まりだと、忘れているんだ」

個人ばかりに気を取られ、ままならない人間よりは全く良い。むしろ彼女の感情に訴えないやり方を、私は気に入っていた。かつての私が、私のやり方を正義としたように。しかし、いくらモラルとして正しいことをしようとも、人がついてくるかどうかとはまた別問題なのだ。
二年間、立方体での彼女を見ていると、かつて彼女が部活で、どのような存在だったのか、ぼんやりとした輪郭が浮かんでくる。


貝のいなくなった教室は、少し散漫とした。彼女は、教壇には乗らないで、教卓の横に立っていた。


ジョーカーが言ったように、彼女は纏める立場でありながら、他のそのような人間たちと微妙に違う。彼女自身が、指導者という立ち位置に縛られている気さえしたし、同時に自ら縛っているようにも見えた。
それは不本意なことではなくて、ただ義務を遂行しようとしているというのが的確だ。だとしたら彼女に東のような親切さと要領の良さは望めない。
その点は、彼女を好きな自分に縛られてしまった私とは違う。彼女の回りの人間は、「指導者である彼女」という言葉を信じている。

かつて部活で何があったのか、私はしらない。気がつけば、太陽に聞く時期を外してしまっていたのだ。
ただ、Sは言った――「  の言ったとおりだった」。私はその意味を知らない。ただ半年前の、彼女と部活を取り巻く空気の悪さだけを、知っていた。
おそらくそれは事実だったのだ。今、彼女は全く別のかかわりを持っている。きっと彼女は決定的に、あちらとこちらの境界を越えていないのだ。悲しいことに、彼女はこちらの人間だった。それも私が嫌悪しているタイプの。





収束がつかないような教室で、私は挙手をした。彼女は私に礼を述べた。
(これが私の欲しかったのものに違いない)
他人行儀な社交辞令。今絡んだ視線には、何の意味もこめられていなかった。

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夕日の注いだあの純粋な日々

かつて私が純で、それが罪だと全く知らなかった頃、日々は滑るように過ぎていった。
私の頭のほとんどを支配していたのは彼女のことで、彼女もまた優しかった。


私が好きだったのは火曜日だった。週の始まりに近い安穏としたその曜日は、七日ごとに部活があり、私にとっては単なる七つの曜日のうちの一つではなかったのだ。

火曜日の終わりには、ワイングラスを注いだような夕日の射す教室に、模造紙やら絵の具やらを仕舞うため、(ときには教科書をとりにいくために)向かう。残っている人間は殆どおらず、生徒をしまう小さな箱は空っぽだ。
私はそんな教室が好きだった。窓の外からは運動部の掛け声が響き、休み時間の喧騒はなく、秒針の音と、まだこの校舎のどこかにいる誰かの足音が微かに聞こえてくる。
静かに絵筆を拭きながら、私は時が流れるのを待っていた。

しばらくすると秒針の囁きと誰かの足音がし、私は顔をあげる。誤差は大抵三分以内だった。

彼女は私に気がつくと躊躇いがちのあいさつをする。
そして私も声を抑えたあいさつをし、それが終わると絵筆を置いて、必要のない教科書を取って、箱を後にするのだ。


それを七日ごとに繰り返していた。それが罪だとは毛頭思わなかった。ただ純粋に、彼女に会いたかった。
それ以外のことは必要なくて、
私は黙って笑い、彼女は引っ掛かりを覚える。
それだけで良かったのだ ただそれだけで


そして時が経ち、あの頃を振り返ってみると、進むことに何の躊躇いもなかった自分を、この手で抱き締めてやりたくなるのだ。

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緑色の昔話①

特徴的だ、というのが第一印象だった。本名はその時知った。(かつての旧友と同じ名字だったのだ)
あだ名はまだ知らなかった。

次に会ったのは約一年後の、教室の角だった。一月半も同じ箱の中で生活していたが、まともに顔を合わせたのはその時が初めてだった。私は前に一度会っていることを忘れていたし、彼女は勿論そうだったから、他のクラスメートと変わらない、他人行儀な社交辞令を二人でした。珍しく私は興にのっていて、人生でも数少ない、満足いく会話ができたと記憶している。あだ名はその時知った。


その次に会ったのは、対角にあたる角でだった。私はまた彼女の後ろで二月あまりを過ごしたのだが、それは私にとって原風景の思い出で、聊か美化されたそれは私が彼女との過去を語る際、三番目くらいに出てくるエピソードだ。

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4月17日16 時

まさか黄色も気づいていたとは。特に何の感動もなく思った。

「一人で食べるの、なんとかしてよ。見ていて痛いんですけど」

それが彼女について述べられたことだと、気づくことが出来なかった。

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6月4日

他人行儀な優しさが欲しい、と私は思う。
そう思っている以上、進展は不幸で、親密は足枷なのだ。



「カジモトモトジロウ」
「ええ?」
「カジモトモトジロウなの?」

くすくす、ちがうじゃあないの。ええ?ほら、現国の。


幸せと囁くと彼女も笑う。幸せの発言に彼女は笑う。私は彼女と接するときのペルソナを、まだ見つけられずにいる。

幸せがいなくなり、私は例の笑顔を貼り付けて言った。「いーい?」彼女は笑顔でいう、








「こころがおれそう」
「どうして」
「彼女にいじっていい認定をうけた」
「あら、進歩じゃないの」
黄色は私の好きな喋り方をした。
「進歩じゃない。私はいじられるのが大嫌いなんだ。それに」
他人行儀な彼女が好きなのだ。

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嘘吐きと偽善者の逃避行②

彼女が使った方法は至ってシンプル、かつチープなものだった。


この学校で遅刻をする者はまず朝学校に電話をしなければならない。そして遅れて学校に着いた時、事務の前にある名簿の、自分の名前の欄に時刻を入れるのだが、彼女はそのシステムの裏を上手についた。
その名簿で私は、12時きっかりに学校に着いたことになっている。しかし私はこの学校の何処にもいない。つまりそういうことだ。


彼女は行方不明の人間だから、何をするのも自由だった。ただ、知り合いに会うことだけは注意しなければならなかった。
だから制服と私服と電光掲示板のニュースに気をつけてなければならないのだ……と彼女は淡々と言った。

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6月10日


「私はね」
「うん」
「四点」
指を何故か三本立てた。
「一試合に」
「うん」
「目標にしようと思うんだよ」
「凄い。頑張ってね!」

笑っていた。特に何の感動もなく、久し振りだ、と思った。(それが他人行儀だろうとなんだろうと、最早どうでもよかった)

「それで、」
「うん?」
「もし、」
「うん」
「もし、目標が達成できたら、噛みつかせてよ!」

彼女は、かつての彼女では無かった。私の発言に全く動揺せず、愉快そうに笑んでいたのだ。「いやだよ!」「なんで、なんで!」

勿論私もかつての私ではない。私と彼女の関係は、当然だが急カーブを曲がるように変化していた。私は余裕な顔をして、その癖必死でハンドルを掴んでいたのだ。ハンドルを切ったのは私だし、その道を選んだのも私だと忘れているのだ。彼女はいつものんびり歩いている。

「モチベーションの問題なんだ」
「そうなの?」
「そうなの――なんで、私だから駄目なの?」
「そういうわけでもないよ」
「よかった」
「ええ」
「なんで駄目なの」
「犬じゃあるまいし」
「犬だと思ってよ」
「むりだよ」

私はね、いつだって君に従順な犬でいたかったのだけど。
(早くこの場を離れたい。べつたりしていると思われないように。彼女に余裕を感じさせないように。)

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6月12日

「私は何も変わらないよ」

だとしたら変わったのは私なのだろう。進歩も退歩も同じように変化でしかなくて、現状に満足していなかった私は、変化を望んだ。そして今は。


『元気?』
『なんで?』
『覇気が無いように見えた』
『私は何も変わらないよ』
『それならいいんだ。それなら…………』


変化をしない今の自分を、やはり今のままで、変化させたくないと望んでいる。動揺しないために、干渉しない。そしてしてほしくない。そのために私は、感情移入をしないように、本気にならないように、細心の注意をはらっていた。
それが仮令さみしいことであったとて、私は。(もうあのようになるのは嫌なのだ)

見ていた友人達も、星も、気にしないようにした。知らないふりを。知らないふりを。


(本当に何も変わっていないのなら、それはいいことだ。変わらないというのは、いいことだ。)

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5月何時か

「私、オアシスのこと好きだよ。彼女よりも好きだよ」
「どうしたんだお前」

私は黙って幸せの言葉を聞いていた。オアシスはいつものように黙っていた。オアシスに聞いて貰うというよりも、その発言自体に意味があったから、特に気にせず話を進めた。
「ほんとうだよ。私はオアシスのこと、すごおく好きなんだ」

やっぱりオアシスは黙っていた。私はにっこり微笑んで、頭を撫でた。

(干渉しない。他人行儀。冷たいのは性格で本当は優しい。そして私に興味がない。)

「彼女は怖いもの」
「彼女は怖くないよ。優しい好い人だよ」
怖い。笑顔で接する癖に腹の底では別のことを考えている。そしてそれを私にぶつけないくせに間接的に押し付ける。直接言う度胸も関心もないくせに
(やめよう。もうすんだことだ)

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