「ああ、河童先輩はとても綺麗で優しくて、だから妬まれて、悪口を言われていたんだよ。」
「男好きだって?」
「さあ、わすれちゃったかれど、そんな感じ。色々と、酷いこと」
先輩のことを思い出しながら言う。部活に入りたての私に親切にしてくれた先輩は、文化祭でナンパをされていた。しかし、何故知らないはずの狐が妬みの内容までしっているのだろうという、一抹の疑問が頭をよぎった。
「先輩は綺麗で美しいから、絶対にナンパされちゃう。だから一人で外に立たせない方がいいんじゃないかなって思ったんだけど、ね。」私は、次に狐が言うことを予想できている。
「河童先輩はナンパをされたがっていた人だよ。見ていれば分かるもの。ちらちらと視線を這わせる。視線が合えばナンパされる。そのことを高一で学んだよ。ずっと言わなかったけれどね」
あまりにも詳しく分かるものだから、純粋に私は感心した。そして私は自分の無知さを誇りに思った。
それでも河童先輩は私にとって、綺麗で優しくて、立派な先輩の一人であることに変わりはない。
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