胆は心配そうに言った。「あんまりそういうことを言っていると、本物に見られちゃうよ」
「違うんでしょ」
「うん」
確かに違った。どうせ私はこの空気にあてられただけで、所詮どれにもなりきれない中途半端な位置にいるのだと、半ば諦めていた。別に偏見があって否定するわけではない。ただ、本当にそうだという確信を得られていないのだ。
「ただね、彼女は私のことをそうだと思っているらしいの。彼女がそう思っている限り、私はそうなんだよ」
黄色があの話をしたとは思わない。彼女に関しては昨日決めた通りだ。
あの時の私なら、彼女に噛み付くのも彼女を押し倒すのも、全く躊躇なくできただろう。
しかし今は。恐らく私は彼女の髪一筋に触るのにさえ戦慄する。それは行き過ぎた愛情などと言う極めて美しい理由などではなく、彼女の後ろにある沢山のものが見えてしまったからだ。彼女が人間に戻ったのかもしれない。若しくは、昨日で三人目が完了した――断ち切りの成果かもしれない。なんにせよ、私は自己中心的で被害妄想で、彼女はただの被害者だ。加えて今の私は他人との接触を嫌悪している。寂しくない。少なくとも今は。しかし、
「違うんでしょ?」
「たぶん」
私は今でも確信を持てないでいる。
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