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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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6月1日10 時59分

(どうしよう どうしよう 嬉しい
嬉しくない
きっと悪い方に考えていたからだ だからましだったんだ
なにも良くなっていない いないんだ!)


指の先には温度が無かった。脈拍は高かった。腕時計をみると長針が58をさし、デジタルの秒が48から49に変わったところだった。00で、始めよう。そう思うと余計動悸がした。血が身体の末端まで届かない。口の中が渇いている。唇も渇いている。呼吸数が少ない。
つまり私は緊張しているのだ。博打みたいだった。だから私はその時、コインを投げないという選択肢もあったことを忘れていた。


楽譜で彼女の太ももを軽く叩くと、無視するわけでもなく、口だけで返事をするわけでもなく、こちらに顔を向けた。そしてそれは私のネガティブな予想をいとも簡単に引っくり返した。

「言いたいことがあったら、言ってね」

何を、と考えるように左下に視線をやった彼女を見て、目を細める。うまくなった作り笑いが、綺麗に顔に嵌め込まれたのが気持ち良かった。そしてそれは思ったより馴染んでいた。私の愛して止まなかった作り笑いは、今度は私の中に生きている。

先ほどの被害妄想はやはり消えていた。
彼女の笑顔が作り物だとわかった上で、それでもなお安心するのは、やはり私が彼女の徹底的に固められた建前を愛していたからに違いない。

自分の直感と、彼女の他人行儀。どちらを信じるべきなのか、今の私は答えを知っている。





(必死で考えることも いらいらすることも 悲しむことも 笑うことさえも
何も
何も必要ない
ただ、ただ、他人行儀な君を 愛す)



例えそれが儚い幻想だったとしても、今の私には思い出が必要なのだ。




(恨みも つらみも 仕返しも 私を支えていた意地さえも
何もかも
私が背負うには 重すぎて あまりにも真っ直ぐ過ぎる
綺麗で醜い感情だった)

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