かつて私が純で、それが罪だと全く知らなかった頃、日々は滑るように過ぎていった。
私の頭のほとんどを支配していたのは彼女のことで、彼女もまた優しかった。
私が好きだったのは火曜日だった。週の始まりに近い安穏としたその曜日は、七日ごとに部活があり、私にとっては単なる七つの曜日のうちの一つではなかったのだ。
火曜日の終わりには、ワイングラスを注いだような夕日の射す教室に、模造紙やら絵の具やらを仕舞うため、(ときには教科書をとりにいくために)向かう。残っている人間は殆どおらず、生徒をしまう小さな箱は空っぽだ。
私はそんな教室が好きだった。窓の外からは運動部の掛け声が響き、休み時間の喧騒はなく、秒針の音と、まだこの校舎のどこかにいる誰かの足音が微かに聞こえてくる。
静かに絵筆を拭きながら、私は時が流れるのを待っていた。
しばらくすると秒針の囁きと誰かの足音がし、私は顔をあげる。誤差は大抵三分以内だった。
彼女は私に気がつくと躊躇いがちのあいさつをする。
そして私も声を抑えたあいさつをし、それが終わると絵筆を置いて、必要のない教科書を取って、箱を後にするのだ。
それを七日ごとに繰り返していた。それが罪だとは毛頭思わなかった。ただ純粋に、彼女に会いたかった。
それ以外のことは必要なくて、
私は黙って笑い、彼女は引っ掛かりを覚える。
それだけで良かったのだ ただそれだけで
そして時が経ち、あの頃を振り返ってみると、進むことに何の躊躇いもなかった自分を、この手で抱き締めてやりたくなるのだ。
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