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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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5月25日12 時35分

「でも、  がそんなこと言うのかな」
何の会話をしているのかも分からない状態で、私は何もできなかった。

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5月21日

「ああ、河童先輩はとても綺麗で優しくて、だから妬まれて、悪口を言われていたんだよ。」
「男好きだって?」
「さあ、わすれちゃったかれど、そんな感じ。色々と、酷いこと」
先輩のことを思い出しながら言う。部活に入りたての私に親切にしてくれた先輩は、文化祭でナンパをされていた。しかし、何故知らないはずの狐が妬みの内容までしっているのだろうという、一抹の疑問が頭をよぎった。
「先輩は綺麗で美しいから、絶対にナンパされちゃう。だから一人で外に立たせない方がいいんじゃないかなって思ったんだけど、ね。」私は、次に狐が言うことを予想できている。


「河童先輩はナンパをされたがっていた人だよ。見ていれば分かるもの。ちらちらと視線を這わせる。視線が合えばナンパされる。そのことを高一で学んだよ。ずっと言わなかったけれどね」

あまりにも詳しく分かるものだから、純粋に私は感心した。そして私は自分の無知さを誇りに思った。


それでも河童先輩は私にとって、綺麗で優しくて、立派な先輩の一人であることに変わりはない。

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6月1日10 時59分

(どうしよう どうしよう 嬉しい
嬉しくない
きっと悪い方に考えていたからだ だからましだったんだ
なにも良くなっていない いないんだ!)


指の先には温度が無かった。脈拍は高かった。腕時計をみると長針が58をさし、デジタルの秒が48から49に変わったところだった。00で、始めよう。そう思うと余計動悸がした。血が身体の末端まで届かない。口の中が渇いている。唇も渇いている。呼吸数が少ない。
つまり私は緊張しているのだ。博打みたいだった。だから私はその時、コインを投げないという選択肢もあったことを忘れていた。


楽譜で彼女の太ももを軽く叩くと、無視するわけでもなく、口だけで返事をするわけでもなく、こちらに顔を向けた。そしてそれは私のネガティブな予想をいとも簡単に引っくり返した。

「言いたいことがあったら、言ってね」

何を、と考えるように左下に視線をやった彼女を見て、目を細める。うまくなった作り笑いが、綺麗に顔に嵌め込まれたのが気持ち良かった。そしてそれは思ったより馴染んでいた。私の愛して止まなかった作り笑いは、今度は私の中に生きている。

先ほどの被害妄想はやはり消えていた。
彼女の笑顔が作り物だとわかった上で、それでもなお安心するのは、やはり私が彼女の徹底的に固められた建前を愛していたからに違いない。

自分の直感と、彼女の他人行儀。どちらを信じるべきなのか、今の私は答えを知っている。





(必死で考えることも いらいらすることも 悲しむことも 笑うことさえも
何も
何も必要ない
ただ、ただ、他人行儀な君を 愛す)



例えそれが儚い幻想だったとしても、今の私には思い出が必要なのだ。




(恨みも つらみも 仕返しも 私を支えていた意地さえも
何もかも
私が背負うには 重すぎて あまりにも真っ直ぐ過ぎる
綺麗で醜い感情だった)

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6月3日

見えない圧力に押しつぶされそうになっていた電車の中で、私は東を思った。すると気圧が一気に下がった。悲しかったことも辛かったことも全て霧消した。彼女とて、例外ではなかった。『東、東。私は君を愛している。』 ぶつけきれない感情は、いつも私の中にある。それはいつも行き場を見つけられずに彷徨っている。

「彼女」にぶつけてきたものは、恐らく大きすぎたのだ。

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6月4日

胆は心配そうに言った。「あんまりそういうことを言っていると、本物に見られちゃうよ」
「違うんでしょ」
「うん」
確かに違った。どうせ私はこの空気にあてられただけで、所詮どれにもなりきれない中途半端な位置にいるのだと、半ば諦めていた。別に偏見があって否定するわけではない。ただ、本当にそうだという確信を得られていないのだ。

「ただね、彼女は私のことをそうだと思っているらしいの。彼女がそう思っている限り、私はそうなんだよ」
黄色があの話をしたとは思わない。彼女に関しては昨日決めた通りだ。

あの時の私なら、彼女に噛み付くのも彼女を押し倒すのも、全く躊躇なくできただろう。
しかし今は。恐らく私は彼女の髪一筋に触るのにさえ戦慄する。それは行き過ぎた愛情などと言う極めて美しい理由などではなく、彼女の後ろにある沢山のものが見えてしまったからだ。彼女が人間に戻ったのかもしれない。若しくは、昨日で三人目が完了した――断ち切りの成果かもしれない。なんにせよ、私は自己中心的で被害妄想で、彼女はただの被害者だ。加えて今の私は他人との接触を嫌悪している。寂しくない。少なくとも今は。しかし、


「違うんでしょ?」
「たぶん」
私は今でも確信を持てないでいる。

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6月5日

(いつでも他人行儀な君に会いたい)


つくづく思うのだ。私は彼女を愛していたわけではなかったのだ、と。

傷付くことが嫌いなだけなのだ。何かを得るための努力を怠るくせに、欲しい欲しいと言い続ける。私は都合が良すぎる人間だ。だから、きっと彼女を好きだと言い続けるべきではない。私は彼女が好きではないのだから。


髪に触れても、何も感じない。ただ、髪の感触が右手にあるだけだ。
そして私は確信した。『私は彼女が好きではないのだ』。
彼女は変わったのだろうか――かつては負の方向だと思っていたそれは、今は見当違いだったのかもしれないと思える。ただ正の方向だとしても私にとっては負だ。
彼女のことに関して、確かめるのは止めようと思った。何の意味もなさない。深く考えるのも止めた。時間の無駄でしかない。深読みもやめた。どうせ間違っているのだから。

私は矛盾していた。他人行儀が好きなくせに、近付いてしまったのだ。





私は彼女を愛していた。
初めて会ったときも、裁縫箱の名前を読んだときも、足の早いのを誉められたときも
船を漕いでいたのを起こしたときも、隣の席で寝顔を見ていたときも、舌の上の飴をみたときも
四月に名簿を見たときも、青を頼んだときも、写真を撮ったときも
円卓の一員だったときも
病院に行ったときも、教室の机で泣いたときも、喫茶店で話をしたときも、君を放課後の階段上に呼び出したときも
頬に触ったときも、押し倒したときも
髪をすいたときも、信じなかったときも
私は彼女を愛していたのだ

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6月6日

妙に視線が絡む。
自意識過剰ではない。私は彼女に対する関心を失っていた。残念なくらいに。

(どうせまたあのときのように)
今度は悲観的ではなく投げやりに構えていた。あの時から、気づかないということを恐怖するようになっている。にこにこと笑う笑顔の裏で、情報が錯綜していた――一人知らないでいるということが、痛々しい。それが、腹立たしい。



奉仕掃除の当番を決めるとかで、彼女は黒板の前に立っていた。中途半端に孤高で、中途半端に真面目な彼女のやり方は、この立方体の中でどのように思われているのだろう。(そんなことを気にしているのはこの中で確実に私だけなのだけれど) 私は一昨日ジョーカーにした話を思い出していた。

「全体が個人の集まりだと、忘れているんだ」

個人ばかりに気を取られ、ままならない人間よりは全く良い。むしろ彼女の感情に訴えないやり方を、私は気に入っていた。かつての私が、私のやり方を正義としたように。しかし、いくらモラルとして正しいことをしようとも、人がついてくるかどうかとはまた別問題なのだ。
二年間、立方体での彼女を見ていると、かつて彼女が部活で、どのような存在だったのか、ぼんやりとした輪郭が浮かんでくる。


貝のいなくなった教室は、少し散漫とした。彼女は、教壇には乗らないで、教卓の横に立っていた。


ジョーカーが言ったように、彼女は纏める立場でありながら、他のそのような人間たちと微妙に違う。彼女自身が、指導者という立ち位置に縛られている気さえしたし、同時に自ら縛っているようにも見えた。
それは不本意なことではなくて、ただ義務を遂行しようとしているというのが的確だ。だとしたら彼女に東のような親切さと要領の良さは望めない。
その点は、彼女を好きな自分に縛られてしまった私とは違う。彼女の回りの人間は、「指導者である彼女」という言葉を信じている。

かつて部活で何があったのか、私はしらない。気がつけば、太陽に聞く時期を外してしまっていたのだ。
ただ、Sは言った――「  の言ったとおりだった」。私はその意味を知らない。ただ半年前の、彼女と部活を取り巻く空気の悪さだけを、知っていた。
おそらくそれは事実だったのだ。今、彼女は全く別のかかわりを持っている。きっと彼女は決定的に、あちらとこちらの境界を越えていないのだ。悲しいことに、彼女はこちらの人間だった。それも私が嫌悪しているタイプの。





収束がつかないような教室で、私は挙手をした。彼女は私に礼を述べた。
(これが私の欲しかったのものに違いない)
他人行儀な社交辞令。今絡んだ視線には、何の意味もこめられていなかった。

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4月17日16 時

まさか黄色も気づいていたとは。特に何の感動もなく思った。

「一人で食べるの、なんとかしてよ。見ていて痛いんですけど」

それが彼女について述べられたことだと、気づくことが出来なかった。

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6月4日

他人行儀な優しさが欲しい、と私は思う。
そう思っている以上、進展は不幸で、親密は足枷なのだ。



「カジモトモトジロウ」
「ええ?」
「カジモトモトジロウなの?」

くすくす、ちがうじゃあないの。ええ?ほら、現国の。


幸せと囁くと彼女も笑う。幸せの発言に彼女は笑う。私は彼女と接するときのペルソナを、まだ見つけられずにいる。

幸せがいなくなり、私は例の笑顔を貼り付けて言った。「いーい?」彼女は笑顔でいう、








「こころがおれそう」
「どうして」
「彼女にいじっていい認定をうけた」
「あら、進歩じゃないの」
黄色は私の好きな喋り方をした。
「進歩じゃない。私はいじられるのが大嫌いなんだ。それに」
他人行儀な彼女が好きなのだ。

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6月10日


「私はね」
「うん」
「四点」
指を何故か三本立てた。
「一試合に」
「うん」
「目標にしようと思うんだよ」
「凄い。頑張ってね!」

笑っていた。特に何の感動もなく、久し振りだ、と思った。(それが他人行儀だろうとなんだろうと、最早どうでもよかった)

「それで、」
「うん?」
「もし、」
「うん」
「もし、目標が達成できたら、噛みつかせてよ!」

彼女は、かつての彼女では無かった。私の発言に全く動揺せず、愉快そうに笑んでいたのだ。「いやだよ!」「なんで、なんで!」

勿論私もかつての私ではない。私と彼女の関係は、当然だが急カーブを曲がるように変化していた。私は余裕な顔をして、その癖必死でハンドルを掴んでいたのだ。ハンドルを切ったのは私だし、その道を選んだのも私だと忘れているのだ。彼女はいつものんびり歩いている。

「モチベーションの問題なんだ」
「そうなの?」
「そうなの――なんで、私だから駄目なの?」
「そういうわけでもないよ」
「よかった」
「ええ」
「なんで駄目なの」
「犬じゃあるまいし」
「犬だと思ってよ」
「むりだよ」

私はね、いつだって君に従順な犬でいたかったのだけど。
(早くこの場を離れたい。べつたりしていると思われないように。彼女に余裕を感じさせないように。)

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