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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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5月7日16時57分

なんだかふわふわする。
目の前で友人が話していることも、ふと気を緩めると、あっと言う間にふわふわに侵食されてしまうのだ。
あれ、と思ったときには取り返しのつかないくらいおいてけぼりになっている。

「だいじょうぶ?元気出して」

友人が心配そうな声で尋ねる。私はいつも元気だよ、とおどけて言うと、「嘘だあ!」とからころ笑った。私もつられて笑った。私は間違えなく元気だから、なんだか変な感じだった。
一体何がいけないんだろう、と首を捻ると「そうおもわない?」。友人が僕に意見を求めた。あ、またおいてけぼり。ふわふわは一瞬でやってきて、一瞬で消える。そのくせ私の時間をごっそりさらっていく。不思議なやつだ。

そういえば、ふわふわが出てくるのは今日が初めてじゃない。
休みが始まる前の土曜日くらいに、別の友達とお弁当を食べていたとき。ふわふわはやってきた。私は輪とは別の方をぼんやり眺めていた。眺めていて、手には金色の包み紙。何か考え事をしていて、「ねえ、きいてる?」「あ、ごめん!」 そんな会話を二回繰り返した。ふわふわだ。そして私は席をたった。席をたって、私は何処へ行ったんだっけ?
ごとん。
「うわ」
何か分かりかけたのに、それも全部、がたごと揺れる電車にたべられてしまった。




電車から降りて狭いホームに立つと、またふわふわがやってきた。でも今は一人だから、そんなこと気にしなくて良い。私の頭をふわふわで侵食してしまえ。

ふわふわに侵食される直前、今日はあの子の髪を撫でていなかったことが頭を掠めた。

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5月9日21 時48分

普遍性が欲しかった。ただの「好き」だけでは、呆気のない終わりが見えてしまう。「好き」は最高値で、それ以上上がりようがないのだ。あとは下がるしかない。それでは駄目だ。常に不安を抱えて生きるなど、真綿で首を締めるようなものだ。

だから好かれるのは悲しかった。だから普遍性が欲しかった。両親からの愛のように、常に永続的に恒久的に与えられるものが。そんな愛情が欲しかった。


そして私は見つけた。見つけたというよりも理解した。


「俺  ちゃんの好みのタイプが気になるんだけど」
あー、確かにね、とざわつく旧友たちを他人事のように感じながら、私は言った。

「他人行儀に優しい人」
 

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5月14日11時23分

ふわり、と手を前に出して左右に振った。

「なに?」

体育の後の、赤い顔をして一人で座っている彼女の頭に手を伸ばすと、汗かいてるから、と手を避けて背中を倒した。
その椅子は教室のものとは違って背もたれが無いから、そのまま倒れてしまうのを妨げられない。そして構わず手を伸ばすと――それは加虐癖や肉体的接触願望というよりも、単純な好奇心からだった――そのまま彼女は連なった椅子に倒れこむように倒れる、かと思われたが、意外なことにするりと足の隙間を縫って零れてしまった。それも微動だにせず。(漠然と、案外腹筋がある、などと思った)

「何をしているの?」
「頭を撫でようと思ったら、汗かいてるからって逃げられちゃったの」

普通に答えないでよ、と笑う友人。
彼女は私の傍にはいないで、ぼうっとしている。バスケの試合で目に付いた、彼女のチームの駄目なところを教えたかったが、なんとなくおこがましい気がしてやめた。(それは欠点を指摘するということがか、彼女と話すということがか、よく分からなかった)
友人と私と、それから微妙な位置に彼女が一人で立っている。おなかが痛い筈だったが、そんなことより私は私のことで精一杯だった。持っていた教科書で足を引っかく。分からなかった。私といることが駄目なのか、それとも自分の意思だったのか。(ただ、いつも被虐的なことは大抵杞憂と被害妄想に終わる) 星は、優しい子だ。だからきっと人を非難しないのだ。

(にげないで)
(ひとりにならないで。おなかがいたくなっちゃう)


考えていることはいつも二つだけだ。それをどう誤解されようと、私は何も言わない。だから、他人行儀な愛が欲しい。だから、早く離れたい。そう、仲良くしたくはない。むしろ、私はそれを恐怖している。足がかりも好かれることも、私にとっては同義なのだ。
だから、たとえそのことで私が痛々しく見られようと、そういうものだと享受するだけの自我と勇気は、残さなくてはならない。そしてそれは様々なものを捨てることにより、残すことができた。

気がつくと、彼女は勇敢にも出来上がっている閉塞した三人の世界に入ろうとしていた。

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5月15日12時

「あげる」
差し出すと、きょとんとした表情で、軽い礼を述べた。私の奇行など、いつものことだとでも言うように。そしてその一方で、「かわいー」などと声が聞こえる。彼女の傍に居る彼女の友人が言っているのだ。私に関する評価だが、私に向けて言ったのではない。だから私は目を細めて、そっと彼女の頭に手を置いた。静かに撫でる。

「え、そういう立場なの?」
彼女とお弁当を囲んでいる友人達が、面白そうに声をかけた。
「うん、私  のこと大好きなんだ!」
「そういうことらしいよー」
笑いを含んで他人事のように言う彼女は、今日は怒っていないようだった。しかし、彼女が私の言葉、特に彼女を褒めるものを、誰かに対して言葉を紡ぐのは珍しいことで、なんだか妙な気分になった。おかしなことに私は、彼女と私の間に、誰か別の人間が介するのがとても不思議な気がしたのだ。そうだ、そういえば私は、彼女が、「彼女を好きな私」について、社交辞令以上の感想を漏らすのを聞いたことが無かった――黄色の話は間接的だし、私が危惧したものは全てが杞憂だったのだ。

「かわいいなあ」。髪を撫でながら思ったままを口にする。すると驚いたことに、口々にえー、とかでもー、とか声がかけられた。
「   よりも花を差し出す     のほうが可愛いよ!」と星。「えー」と心臓。そして極めつけは「      のほうが、」と濁した船頭の後を掬って「私より     のほうが可愛いよ」と繋げた彼女だった。私はそのリップサービスになんと返事をしたら良いか分からず、また曖昧に笑うしかなかった。否定は無限に続く会話の始まりだし、この場合、謙遜は自虐でしかなかった。だから、「もう、   はかわいいなあ」と彼女に頬を寄せた。
(ぴたり)
一瞬と止まった空気に、知らない振りをすれば良いものを、「あ、ひかれちゃった」と思ったままを口にするものだから、だから私は駄目なのだ。(私は彼女の友人達が望む私以外の私を演じてしまったのだ。そうだ、ここには黄色も幸せもいない。この半アウェイな状況を、私は友好的な友人達のために、忘れていた)

「へえ、ちょっと意外かもしれない!」
笑いながら言う船頭。
「えー、そんなことないよ。だって、中二のときは、」
東のことが大好きだったんだよ。と言ってから(あ、しまった)
「好きだったって、今は?」
「うーん、あんまり」
接点も無いしね、と言い訳のようにもごもごと口を動かしながら彼女の顔を見ると、「  ?」と東の名前を呟いていた。東を名前で呼ぶのは彼女たちが旧友であることの証だった。
「えーと、それも可愛かったから?」
「うん!」
へー、と友人達が不思議そうに言う。
「え、でも東と彼女ってあんまり」
「意外だよね」
「そうかなあ。東も彼女も似てると思うよ」

(他人行儀に優しくて、作り笑顔が上手で、字が右上がり。親切なのに干渉しなくて、私に関心が無くても優しい人たち)

膝には広げられたプラスチックの弁当箱があり――なんと中には缶詰の果物(多分あれは白桃だ)がでんと詰まっている。
私はそれをぼんやりと見ながらお昼を囲む友人たちの会話を聞いていた。意地悪に纏めると、東より彼女のほうが良いと勧めている。そして話題は静かに逸れていく。
「いいの?待ってるよ」
あ、と振り返れば、友人たちが私を待って談笑していた。
私は彼女に手を振ると、私を待つ友人達の方へ駆けていった。


お弁当を広げたベンチの傍には、シロツメクサが沢山咲いていた。ただそれだけの話だった。

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5月18日15 時30分

気持ちが悪かった。人間との肉体的な接触が。
特に幸せやJのような、ホモ・サピエンスとしてではなく人間としての生理的行動を連想させるような触り方は。
Kは大丈夫だったところを見ると、もしかしたらそれだけではなくて、もっと根本的な嫌悪があるのかも知れなかったが、それを言語化することは危険だった――認識は災いだ。知らない振りをするのが正義とは言わないまでも、最善だと学んだばかりだから。

「来ないでよお!」

幸せは追いかけてくる。話しかけてくる。どうして放っておいてくれないのか。どうして干渉するのか。恒久の関心なんて無いくせに、べたべたとして、生々しくて。
自分が人間だと自覚してしまいそうになる。それは嫌だった。人間である以前に、**の*の*の****でいたかった。

「来ないでったらあ!」

やめて、やめて、私に近づかないで。
飛び込んだ教室には彼女がいた。


指先に触れた髪からは、生々しさも人間臭さも感じられない。それは彼女が人間でないからなのか、もしくは、人間であるあまり匂いが分からないのか、冷静でない私には考えることが出来なかった。
ふくんだように(被虐的に言うなら、若しくは馬鹿にしたように)笑う。「笑われちゃったあ」。私は返事を求めていない。彼女も何も言わない。髪は柔らかい。彼女は、珍しく機嫌が良い。抱きつく私に、なに、と問う。私は黙っている。彼女も、黙っている。



何、と問われた答えを私は持ち合わせていない。ただこの不愉快な気分を癒してくれるのは彼女だと、私は根拠のない確信を持っていた。そしてそれは事実だった。

いつもと同じ蝸の時間が流れる。私は、やっぱりそれを甘受するしかない。

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5月22日12時45分

欲求不満と好奇心と人恋しい、の境界がとけた。
「噛み付かせてよ」
その言葉は、その言葉の意味失い、現実味を奪っていた。あの時と同じだった。

(私はどうしてしまったのだろう。彼女以外の人間にそのようなことを思うなんて。まるで私が本物のようだ。)

腕をぐいと引っ張って、椅子から引きずろうとした。三秒後に自分の本意に気づき、戦慄した。

(違う、私は寂しいだけだ。人恋しいだけだ。甘えたがりなだけだ)


彼女は、今日は席についていなかった。珍しいことだ。
私を遠ざけるためかもしれない。だとしたら私の作戦は成功したことになる、それなのに私は、「ねえ、ねえねえ――……」「なーに」「なんでもない」


「ほら、あっち向いてなさい」
頭をつかまれ、ぐるりと顔を向けられた先には、彼女がいる。机二個分くらいの、笑顔。(なんで私に近づくの)
やめてよ、やめてよ、と喚く私と、不審そうな彼女の、視線がするりと滑る。摩擦係数零、ただの偶然。なのになのに、それ以上の意味を見出してしまい私は動揺した。
(やめてやめてやめて、今は君が怖いんです。分かっているんです。君は星に何か何か言ったのでしょう、だから君は余裕があるのでしょう、いつもと違うことをするのでしょう、だからわたしはわたしはわたしは)

「ねえ、噛み付かせてよ!」
友人Aが代替人である筈は無い、でも今の私には、間欠泉のように吹き出る好奇心を彼女にぶつけることは出来ないのだ。

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5月19日12 時38分

沈黙を苦にするかどうかが親しさの指標なのだと狐が言った。

「しかしあれは慣れだよ。若しくは無関心だ」

本当のところは彼女にしか分からないに違いないが、それは限りなく正解に違いない。そして、何故かその事実に傷ついている自分に気がついた。

(おかしいな。私は表面的に彼女に受け入れられていて、望んだのはそれだけの筈だったのに)

「本当は嫌なのかも!」

戯れの、単なる無意味な会話であった筈の言葉に傷付いているのは、しかし何故だろう。


(私は強欲だ。貪欲だ。やっぱり足りない。先が見える限り、それが新月の蛍光だったとて求め続けてしまう。満足が、足りない。満足が、足りない。)
 

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5月24日19時58分

お前は躁鬱に見える、と幸せは言った。「躁鬱?」
「というか、まわりからもそう見えている」
幸せは、優しかった。私が一人になるたびに此処にどろどろしたものを吐いていると言うのに。甘い。みんな。喉が焼けるように甘い。だから私は、
(だから私はむしろ見捨てて欲しいんだ)
一番醜い感情を内包しているのは私で、それを取り繕うと必死でもがいている。自分が可愛いくせに、他人のために剣を翳すから、怪我をする。
今は、穏やかな気持ちだ。辛いのに辛くない。受け入れている。このように幸せと話している間は。

でも、駄目なのだ。この繋がりが切れた瞬間から、じわじわと黒いほうの私が侵食してくる。
この瞬間は、私であることに間違いないのに、明日のこの時間に今の私でいられる自信がない。
今日の私も明日の私も、非常に刹那的だ。一貫した私はどこにも居ないのだ。

おそらく誰かと繋がり続けていられるのなら、私は優しい私のままずっと居られるのだろう。でもそれは出来るはずが無いのだから、意味が無い。

躁状態の私と、鬱状態の私がいたとして、どちらも私であることに違いは無い。
躁の私に躁だと言い、鬱の私に鬱だという友人達は、どんな私を求めているのだろう。
ふと、自分が分からなくなってしまったキャラメルさんを思い出した。


私はただ、彼女を思っていたときのように、優しい気持ちでいたかっただけなのに、誰も、彼女さえもそれを許してくれないのだ。

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5月26日12 時48分

教室に足を踏み入れる、何の気なしに泳がせた視線が絡んだ。
(ああ、私はまた墓穴を掘った)
彼女は、いつも黙っている。確固たる信念や、親の熱心な教育の賜物などではない。ただ恐らく、黙っている以外のことを知らないのだろう。
つん、と視線を逸らした――今、此処はもう舞台の上だ。

黄色との会話が聞こえていようがいまいが、私はもう何もしない。できない。それだけの刃を失ってしまった。



「私の作戦は成功したんだ!」
「あらよかったじゃないの」
「ただ、私の意図するものとは若干ずれてしまったんだよ。それも悪い方に」
「意図が伝わった?」
「彼女は、恐らく自分が一人になれば私が近づくと、学習したんだ。だから自分から人に絡むんだ。」

「きっとこれによって彼女の中で『嫌いじゃない』から『嫌い』になったよ。」

これで、良かったのだ。

「今はあまり好きじゃないしね」



彼女は、何も言わない。私がどれだけ黄色に話そうと、何も言わない。何かに気付いても、何も言わない。
だから私も黙るべきだったのだ。
恐らく、内通者は黄色ではなく私だったのだろう。一人なのは、私ではなかったのだ。

被害妄想は今は消えていた。幸せや黄色の言葉を借りるなら、躁だ。これが鬱に移行する前に、私は彼女に謝罪の念を抱かねばならない。

しかし、その気持ちも明日には消えてしまうのかもしれない。明後日には、そう思ったことさえも忘れているのかもしれない。
一秒後のことも分からない私を支えているのは、かつて彼女が好きだったという、唯一不変である過去の自分それだけなのだ。

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5月30日13時14分

(知らない振りをしよう。それが唯一の贖罪のなのだから!)


彼女はそれでも知らない振りをしていた。喚く私に対して何も言わなかった。
ただ、私が叫んでいるときに耳を塞いでいた――そんな彼女の背中に手を合わせた。
私は、謝らなかった。彼女に対してなにもしないことが最善だと、思っていた。
そして実際そうに違いない。

今まで私が考えることは只の妄想だったけれど、今回ばかりはぴたりと一致している気がした。
しかしそれを確かめる術は無い。私が必要以上に落ち着いていることが間接的な証拠のような気がした。それだけだ。

彼女は、黙っていた。だから私も黙らなくてはならない。
だから私も黙らなくてはならないのだ。

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