人の目を見れないから、恐らく私は顔の表情に重きを置いていない。勿論視線に意味はない。判断は言葉と声と状況に起因していて、それで恐らく間違えて来なかった。だから同時に人の目を見れないわけで、要は人の機微に触れすぎるのに耐えられないということなのだろう。
(声音で――)
私は顔を伏せた。
(声音で分かってしまうんだ)
それが勘違いである可能性だってある。それが被害妄想の可能性だってある。だから、心臓は悪くない。心臓はただ噂話をしているだけで、なんの悪意も無いんだから。
それが事実なら当然の報いだが、虚実なら耐えられまい、と思った。それの特性上、尾鰭がつくのは確実であるのだけれど。知らない振りをすればいいだけだ、とポジティヴに私は思う。そしてようやく過去を濯げるのかと、曲がった安心をする。今を肯定する。
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