もしかしたら、何も分かっていなかったのかもしれなかった。
気持ちは一過性のもので、いずれなくなると暗に示したのかもしれないし、卑屈な謙遜をしたのかもしれない。今更分からないし分かる必要もないことだが、なんとなく、前者ではないか、と思った。太陽は言った。「彼女はきっと、ここまでだとは思っていないと思う」。そしてそれは本当だったのだ。
本当に私なんかでいいの、一年後に後悔するかもよ。そう言われて私は答えた。あなたでなくては駄目だし、尊敬しているのは、今のところあなただけだ、と。
彼女は彼女らしくないことを言った。今思えば、前日からそうだった。可か不可か以外について言及するのは彼女にしてはおかしなことだったし、私に必要以上に干渉するのも、彼女の性格を考えればおかしなことだった。しかしその違和感に気付いたのは、それから随分と経ってからだった。
私が言ったことは、確かに本当のことだったし、今も嘘ではない。しかし、と私は思う。
(彼女があんなことを言わなければ。私があんなことを言わなければ。今ごろ私は彼女に頂戴、と言って、彼女も私にいいよ、と笑顔で言って、それで私は桃色を手に持って、きっと笑顔で彼女に手をふれていたのに)
彼女は私に364日の猶予を与えた。その意図は、忘却防止の意味しか含まなかったに違いない。そしてその時は、お互いにそう思っていたはずなのだ。
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