それは最早病気かもしれなかった。
わからないのだ。彼女が誰に向かって話しているのか。
オアシスが言葉を救って代わりに返事をして、曖昧に首を傾げて、私は溜め息をついた。
(わからないんだ。目があったのかどうかも)
視線、言葉、内容、角度、表情、状況。その他諸々の条件を考慮して、それに合致するのが私しかいないと分かっていても、それでもわからない。目があっていても、その事実を認識することにひどく時間がかかった。
「風邪ですか」
「うん、熱が出てね」
話しかけるぶんには普通であるところを見ると、やっぱり認識する私の側に問題があるのだろう。しかし決定的なことに思いあたるには至らなかった。だから単純に、私はそのように扱われ慣れていないだけだということにしておいた。
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