微熱まで下がった。果たしてどうしたものか。
許された時間を二日も無駄に過ごしてしまったのだ――残された時間は少ない。
ぬるくなったシーツの、まだ冷たいところを脚で探しながら、私は天井の木目を目でなぞる。するとまた眠気が侵食してくる。『今週は色々あったからね。ゆっくりお休み。』と、熊。『ありがとう、もう眠ることにするよ……』。優しい熊。熊はいつだって一切の妥協と馴れ合いを許さない。
目を閉じて想像する。想像のつかない想像を創造する。それにはいつだって彼女の顔をした誰かがついてまわって、私に向かって微笑んでいる。
私のすることで誰かが幸せになるのなら、なんでもしたい、と思うのは間違っているのだろうか。
愛に生きたわけでもなければ、恋に盲目になったわけでもないが、私はそんなことを思う。たった一言を、私が言うだけで救われる人間がいるのだ。ビター・チョコレートの河で溺れている人間を、私は掬うことができるらしい。
しかし、その一方でこんな言葉を思い出す。
君は自分本位に生きるべきだ。君は自分の幸せを願うべきだ。そんな言葉を。
色々な人間が様々な言葉で私にそう言ってきた。肯定的な言葉面だが、常に否定的非難的ニュアンスを含んでいて、そのたびに私はこう答えた。そしてこれからも同じことを言うだろう。私はいつだって自分の好きなように生きていた。そんなふうには生きていない。と。
いつだって自分の好きなように生きてきて、それで誰かに死ぬほどの迷惑をかけてきた。だから、誰かの幸せのためになにかをしなければならないのだと、思っている。そしてそれこそが私の幸せだ。そう思うことすらエゴだと分かっている。けれど。そうして私は許されたいのだ。今まで私が迷惑をかけてきて、それ故私に敵意を向けた人たちに。
一度でも誰かに敵意を向けた人間は、一生その誰かを許すことはないのだ。過去を消すことなど、決してできはしないのだから。
私のすることで誰かが幸せになるのなら、なんでもしたい。そんなのはエゴだ。真の幸せではない。分かっている。でも、許して欲しい。本当は誰かじゃない。あなたに許して欲しい。でも私は、あなたに許される方法を知らないんです。だから、誰かを幸せにしようとするんです。それで、償おうとするんです。やっぱり、自分本位なだけなんです。
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