忍者ブログ

それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

2024.11│123456789101112131415161718192021222324252627282930

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

9月11日 スカート

「ああ、そうだ」
私は人差し指で首をなぞった。
「これ、一昨日もらったんだ。狐と幸せに」
親指で鎖を襟の下から引っ張り出すと、鳥籠をあしらったチャームを晒す。銀色で小ぶりのそれは、華奢で今にも壊れそうだ。


「プレゼントはね、きらきらしたのに、したんだよ!」と楽しそうに笑った狐は、どうやら方向性を違わなかったらしい。ピンク色の紙袋、極彩色のリボン。目に刺さる色。「ありがとう!」「幸せとね、凄く悩んだんだ!」私は貰ったその場で首に巻いた。家に帰っても巻いていた。学校が始まっても巻いていた。


華奢で小さな今どきのそれは、余所行きのジュエリーボックスにでも入れておくべきなのだ。壊れてしまうし、学生的ではない。常につけているものでもない。分かっている。そしてなにより、浮いているのだ。


首を見て目を丸くする太陽に
「私らしくないよね」
と言うと胸にぽっかり穴が開いて、何とも言えない重苦しい気持ちになっていた。「そうだよね、あんまりつけないよねえ」
だとしたら何故私はいつまでもこうしているのだろう。

思いやりだな、と言った幸せに、私が気に入っただけだよ、と応えた。それは本当だったが、だからといって真理ではない気がした。


銀色をぶら下げた自分を想像したら、上流階級のパーティーに紛れ込み――必死で溶け込もうとしている――一般市民を見てしまったような憐憫の情が溢れてきて、惨めったらしくなった私は、結局風呂以外ずっとつけていたそれを、首から外してしまった。



外的な私と内的な私にずれが生じること以外にも、私自身に性別の概念が加わることが、堪らなく気持ちが悪かった。
いつまでも膝上のスカートを履いている理由を、私はうっかり失念していた。

拍手

PR
*COMMENT-コメント-
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
ブログ内検索
アクセス解析