私は明後日、神社に行く。
暑い。
二階の自室は太陽光をたっぷり吸った大気で満ちている。全身からじっとりと汗が滲み出、心なしか息をするのが億劫だった。
寝転んだシーツが、ひんやりとして気持ちが良い。
単語帳を片手で持ち、全身の力を抜いていると、いつのまにかうとうととしていた。
夢を見た。
彼女が私を見ている。広い教室の対角線上に、視線がはしっている。
彼女は笑う。貼り付けた笑みで笑う。私はそれに気づかないでいる。
彼女は手を振る。昔のように手を振る。私はやっと彼女に気付き、私に向かった視線を見る。
そして私は彼女を指差し言うのだ。
ぱ、と目が覚め私は、首筋に汗が溜まっていることに気付いた。
馬鹿馬鹿しい、と私は思う。私は意固地になっているだけなのだ。自分自身を救うために。
何の意味があるのだろう。思わせ振りは手口だと、彼女は何度も示してきたというのに。彼女は私ではないし、私は数学でない。そんなことは分かっている。それでは誰も救えないし掬われないことなど、分かっている。
枕の横に転がる携帯電話のランプは青く光っていて、私はのろのろとそれを掴む。知らない振りをしろというのだろうか、そんなことを言われてまでも。気付くなと、何もするなと、全てを知っていて知らない振りをしろと?
そんなこと私は出来ない、屈辱を与え続けるなど、日にちを跨いで待つことなど――そうだ、私は短期決戦型だ。
私は顔を枕に埋めた。自己中心的な自分が、たまらなく嫌だった。
『私はあなたとは違うんだ』
彼女はそれでも笑っている。
私はまた負けた気がして唇を噛む。
私は明後日、神社に行く。
彼女の影は、まだ私の傍をちらついている。
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