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それでも君を*****。

(愛か恋かも分からないけれど)

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嘘吐きと偽善者の逃避行①

「みかなちゃん驚かないでくださいね。なんと僕は明日、お昼時の修道院の鐘ががんがん鳴り始めるころにどろんと教室から消えてしまいます。みんなが段々眠くなり出す四時間目の真ん中くらいだけれど、鐘の音に吃驚して起き出すのです」
「なんで消えてしまうの?保健室へ行くの?」
「違います。僕の身体はいたって健康体ですもの。ただ、頭がどうかしてしまったみたいで、だからそれを治すために、試しに消えてみるんです。」
「頭はがおかしくなってしまったって、私には充分正常に見えるけれど」
「いいえ、そんなことはありません。断言できます。それはみかなちゃんが一番よく知っているでしょう?白々しいことをいっちゃあいけませんよ、嘘つきは天国へ行けませんから」

「みかなちゃん、僕はあなたを迎えにいきます。だいたい10日位して僕が過去の人になったら、明日のお昼時どろんと消えるのとおんなじように、どろんと現れてあなたを連れ去ってしまいます」


一つ言いたいのは、これは決して顔を見合わせた上での会話でないということだ。突き詰めれば回路の詰まった箱と箱との間の記号のやりとりであるメールの会話であった――だから彼女は僕という不愉快な一人称と、媚びたような敬語を使っている。
実際の彼女はふざけたことの出来ない馬鹿のように真面目な性格を「していた」筈で、また、私に話しかけるような甲斐性も無かったのだ。


そして次の日、彼女は宣言した通りに教室からどろんと消えてしまった。さらに十日経って、やっぱり宣言通り彼女は私を連れ去ったのだ。

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5月19日12 時38分

沈黙を苦にするかどうかが親しさの指標なのだと狐が言った。

「しかしあれは慣れだよ。若しくは無関心だ」

本当のところは彼女にしか分からないに違いないが、それは限りなく正解に違いない。そして、何故かその事実に傷ついている自分に気がついた。

(おかしいな。私は表面的に彼女に受け入れられていて、望んだのはそれだけの筈だったのに)

「本当は嫌なのかも!」

戯れの、単なる無意味な会話であった筈の言葉に傷付いているのは、しかし何故だろう。


(私は強欲だ。貪欲だ。やっぱり足りない。先が見える限り、それが新月の蛍光だったとて求め続けてしまう。満足が、足りない。満足が、足りない。)
 

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5月24日19時58分

お前は躁鬱に見える、と幸せは言った。「躁鬱?」
「というか、まわりからもそう見えている」
幸せは、優しかった。私が一人になるたびに此処にどろどろしたものを吐いていると言うのに。甘い。みんな。喉が焼けるように甘い。だから私は、
(だから私はむしろ見捨てて欲しいんだ)
一番醜い感情を内包しているのは私で、それを取り繕うと必死でもがいている。自分が可愛いくせに、他人のために剣を翳すから、怪我をする。
今は、穏やかな気持ちだ。辛いのに辛くない。受け入れている。このように幸せと話している間は。

でも、駄目なのだ。この繋がりが切れた瞬間から、じわじわと黒いほうの私が侵食してくる。
この瞬間は、私であることに間違いないのに、明日のこの時間に今の私でいられる自信がない。
今日の私も明日の私も、非常に刹那的だ。一貫した私はどこにも居ないのだ。

おそらく誰かと繋がり続けていられるのなら、私は優しい私のままずっと居られるのだろう。でもそれは出来るはずが無いのだから、意味が無い。

躁状態の私と、鬱状態の私がいたとして、どちらも私であることに違いは無い。
躁の私に躁だと言い、鬱の私に鬱だという友人達は、どんな私を求めているのだろう。
ふと、自分が分からなくなってしまったキャラメルさんを思い出した。


私はただ、彼女を思っていたときのように、優しい気持ちでいたかっただけなのに、誰も、彼女さえもそれを許してくれないのだ。

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5月26日12 時48分

教室に足を踏み入れる、何の気なしに泳がせた視線が絡んだ。
(ああ、私はまた墓穴を掘った)
彼女は、いつも黙っている。確固たる信念や、親の熱心な教育の賜物などではない。ただ恐らく、黙っている以外のことを知らないのだろう。
つん、と視線を逸らした――今、此処はもう舞台の上だ。

黄色との会話が聞こえていようがいまいが、私はもう何もしない。できない。それだけの刃を失ってしまった。



「私の作戦は成功したんだ!」
「あらよかったじゃないの」
「ただ、私の意図するものとは若干ずれてしまったんだよ。それも悪い方に」
「意図が伝わった?」
「彼女は、恐らく自分が一人になれば私が近づくと、学習したんだ。だから自分から人に絡むんだ。」

「きっとこれによって彼女の中で『嫌いじゃない』から『嫌い』になったよ。」

これで、良かったのだ。

「今はあまり好きじゃないしね」



彼女は、何も言わない。私がどれだけ黄色に話そうと、何も言わない。何かに気付いても、何も言わない。
だから私も黙るべきだったのだ。
恐らく、内通者は黄色ではなく私だったのだろう。一人なのは、私ではなかったのだ。

被害妄想は今は消えていた。幸せや黄色の言葉を借りるなら、躁だ。これが鬱に移行する前に、私は彼女に謝罪の念を抱かねばならない。

しかし、その気持ちも明日には消えてしまうのかもしれない。明後日には、そう思ったことさえも忘れているのかもしれない。
一秒後のことも分からない私を支えているのは、かつて彼女が好きだったという、唯一不変である過去の自分それだけなのだ。

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5月30日13時14分

(知らない振りをしよう。それが唯一の贖罪のなのだから!)


彼女はそれでも知らない振りをしていた。喚く私に対して何も言わなかった。
ただ、私が叫んでいるときに耳を塞いでいた――そんな彼女の背中に手を合わせた。
私は、謝らなかった。彼女に対してなにもしないことが最善だと、思っていた。
そして実際そうに違いない。

今まで私が考えることは只の妄想だったけれど、今回ばかりはぴたりと一致している気がした。
しかしそれを確かめる術は無い。私が必要以上に落ち着いていることが間接的な証拠のような気がした。それだけだ。

彼女は、黙っていた。だから私も黙らなくてはならない。
だから私も黙らなくてはならないのだ。

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5月25日12 時35分

「でも、  がそんなこと言うのかな」
何の会話をしているのかも分からない状態で、私は何もできなかった。

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5月21日

「ああ、河童先輩はとても綺麗で優しくて、だから妬まれて、悪口を言われていたんだよ。」
「男好きだって?」
「さあ、わすれちゃったかれど、そんな感じ。色々と、酷いこと」
先輩のことを思い出しながら言う。部活に入りたての私に親切にしてくれた先輩は、文化祭でナンパをされていた。しかし、何故知らないはずの狐が妬みの内容までしっているのだろうという、一抹の疑問が頭をよぎった。
「先輩は綺麗で美しいから、絶対にナンパされちゃう。だから一人で外に立たせない方がいいんじゃないかなって思ったんだけど、ね。」私は、次に狐が言うことを予想できている。


「河童先輩はナンパをされたがっていた人だよ。見ていれば分かるもの。ちらちらと視線を這わせる。視線が合えばナンパされる。そのことを高一で学んだよ。ずっと言わなかったけれどね」

あまりにも詳しく分かるものだから、純粋に私は感心した。そして私は自分の無知さを誇りに思った。


それでも河童先輩は私にとって、綺麗で優しくて、立派な先輩の一人であることに変わりはない。

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6月1日10 時59分

(どうしよう どうしよう 嬉しい
嬉しくない
きっと悪い方に考えていたからだ だからましだったんだ
なにも良くなっていない いないんだ!)


指の先には温度が無かった。脈拍は高かった。腕時計をみると長針が58をさし、デジタルの秒が48から49に変わったところだった。00で、始めよう。そう思うと余計動悸がした。血が身体の末端まで届かない。口の中が渇いている。唇も渇いている。呼吸数が少ない。
つまり私は緊張しているのだ。博打みたいだった。だから私はその時、コインを投げないという選択肢もあったことを忘れていた。


楽譜で彼女の太ももを軽く叩くと、無視するわけでもなく、口だけで返事をするわけでもなく、こちらに顔を向けた。そしてそれは私のネガティブな予想をいとも簡単に引っくり返した。

「言いたいことがあったら、言ってね」

何を、と考えるように左下に視線をやった彼女を見て、目を細める。うまくなった作り笑いが、綺麗に顔に嵌め込まれたのが気持ち良かった。そしてそれは思ったより馴染んでいた。私の愛して止まなかった作り笑いは、今度は私の中に生きている。

先ほどの被害妄想はやはり消えていた。
彼女の笑顔が作り物だとわかった上で、それでもなお安心するのは、やはり私が彼女の徹底的に固められた建前を愛していたからに違いない。

自分の直感と、彼女の他人行儀。どちらを信じるべきなのか、今の私は答えを知っている。





(必死で考えることも いらいらすることも 悲しむことも 笑うことさえも
何も
何も必要ない
ただ、ただ、他人行儀な君を 愛す)



例えそれが儚い幻想だったとしても、今の私には思い出が必要なのだ。




(恨みも つらみも 仕返しも 私を支えていた意地さえも
何もかも
私が背負うには 重すぎて あまりにも真っ直ぐ過ぎる
綺麗で醜い感情だった)

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6月3日

見えない圧力に押しつぶされそうになっていた電車の中で、私は東を思った。すると気圧が一気に下がった。悲しかったことも辛かったことも全て霧消した。彼女とて、例外ではなかった。『東、東。私は君を愛している。』 ぶつけきれない感情は、いつも私の中にある。それはいつも行き場を見つけられずに彷徨っている。

「彼女」にぶつけてきたものは、恐らく大きすぎたのだ。

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6月4日

胆は心配そうに言った。「あんまりそういうことを言っていると、本物に見られちゃうよ」
「違うんでしょ」
「うん」
確かに違った。どうせ私はこの空気にあてられただけで、所詮どれにもなりきれない中途半端な位置にいるのだと、半ば諦めていた。別に偏見があって否定するわけではない。ただ、本当にそうだという確信を得られていないのだ。

「ただね、彼女は私のことをそうだと思っているらしいの。彼女がそう思っている限り、私はそうなんだよ」
黄色があの話をしたとは思わない。彼女に関しては昨日決めた通りだ。

あの時の私なら、彼女に噛み付くのも彼女を押し倒すのも、全く躊躇なくできただろう。
しかし今は。恐らく私は彼女の髪一筋に触るのにさえ戦慄する。それは行き過ぎた愛情などと言う極めて美しい理由などではなく、彼女の後ろにある沢山のものが見えてしまったからだ。彼女が人間に戻ったのかもしれない。若しくは、昨日で三人目が完了した――断ち切りの成果かもしれない。なんにせよ、私は自己中心的で被害妄想で、彼女はただの被害者だ。加えて今の私は他人との接触を嫌悪している。寂しくない。少なくとも今は。しかし、


「違うんでしょ?」
「たぶん」
私は今でも確信を持てないでいる。

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